その他でも、中日の蔵本英智は、2004年から登録名を「英智」に変更すると、前年の61試合から107試合へと出場試合を増やし、ゴールデングラブ賞も受賞。土谷鉄平は、中日時代は出番に恵まれなかったが、楽天に金銭トレードで移籍して登録名を「鉄平」に変更すると、移籍1年目の2006年に103試合に出場し、チーム2位の打率.303を記録した。

 現役では、オリックスのT-岡田こと岡田貴弘の名前が挙がる。高卒4年目の2009年に1軍43試合に出場して7本塁打を放つと、登録名を「T-岡田」に変更した2010年はノーステップ打法から本塁打を量産。129試合に出場してリーグ最多の33本塁打を放ち、22歳の若さで本塁打王となった。この年からチームの指揮を執った岡田彰布監督と同じ「岡田姓」で「ややこしい」というのが登録名変更の発端だったが、結果的には劇的な効果をもたらすことになった。

 登録名を“戻して”成功したパターンもある。今年の日本シリーズで「甲斐キャノン」を発動させてシリーズMVPに輝いた甲斐拓也は、プロ1年目の2011年から16年までは「拓也」を登録名としていた。それを2017年に「甲斐拓也」に戻すと、前年の13試合出場から一気に103試合と出場数を増やし、今季の大ブレイクへと繋げた。

 その一方で、登録名変更で成績が下降した選手もいる。阪神の藤川俊介は、2011年に登録名を「俊介」としたが、成績的には2010年の124試合出場、打率.255、1本塁打、10打点、5盗塁から、108試合出場、打率.242、1本塁打、9打点、5盗塁と“横ばい”。その後も、金本知憲の連続試合出場が止まる原因となった盗塁失敗や打撃不振での2軍降格、復帰後も途中出場が続くなど、登録名変更がプラスには働かなかった。

 もう一人、今季ブレイクが期待されたオリックスの後藤駿太は、プロ入り以降「駿太」として実績を重ねて2017年には129試合に出場してシーズン71安打を放ったが、登録名を他の選手と同様に本名とした今季は、わずか33試合出場で8安打のみ。自身6年ぶりに本塁打ゼロのシーズンとなってしまった。

 果たして、金子が「弌大」として満足の行く成績を残せるか。勝負師であるからこその“改名”。吉と出るか、凶と出るか。結局は本人次第、という意見もあるだろうが、勝負の世界では「運」も重要。それを掴むための「登録名変更」も、一つの手段なのかもしれない。