米国でも高校生投手の“酷使”が問題に…近年のデータで浮上する「恐るべき事実」【杉山貴宏】 (3/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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米国でも高校生投手の“酷使”が問題に…近年のデータで浮上する「恐るべき事実」【杉山貴宏】

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ホワイトソックスの右腕マイケル・コペック(写真:getty Images)

ホワイトソックスの右腕マイケル・コペック(写真:getty Images)

 つまり、高卒時に93マイル以下しか投げられない投手はドラフトで1巡指名されない。となると高校生たちはどうするか。答えは単純、より速い球を投げることを追い求める。当然のように健康面への配慮はないがしろにされながら。

 するとどういう結果が待っているかも自明だ。高校時代に酷使された弊害はプロ入り後に表面化し、高卒でエース級と呼べるまでに大成する投手は生まれにくくなる。実際、08年から12年にドラフト1巡指名された高卒投手でもっとも勝ち星を挙げたジェーク・オドリッジでさえ47勝48敗と負け越しており、所属球団もメジャーだけで3チームを渡り歩いている。

 ちなみに今季のサイ・ヤング賞の投票で各リーグの上位5位の得票を得た10人のうち、高卒でプロ入りしたのはア・リーグで受賞を果たしたブレーク・スネル(レイズ)だけ。そのスネルは11年の1巡(全体52位)指名された際は体重が約84キロで球速も90マイル程度しか出なかった。今の彼は約91キロまで増量し、球速も平均で96マイル、最高99マイルを計時する。高校時代に無理に球速を追求しなかったことで、プロ入り後にハードボーラーへと成長する余地が残されていたのだ。

 少年時代から球速にこだわることへの弊害も、統計的には実証済み。「球速至上世代」とも呼べる11年から17年にドラフト1巡指名された高卒投手66人のうち、35%にあたる23人がひじか肩の手術を経験した。その23人のうちメジャーデビューを果たせたのは8人しかいない。

 若い投手たちと、彼らを指名する球団側の球速へのこだわりには、抗いがたい誘惑とともにトミー・ジョン手術への根拠なき無頓着さもまた背景にある。確かに多くの投手は手術から15カ月ほどで復帰を果たせているが、そうでなかった投手もまた少なくはなく、しかもこの「球速至上世代」が若い頃にトミー・ジョン手術を受けたことによる真の弊害は、まだ誰にも分からないにも関わらずだ。



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