・オルンガ(柏レイソル)

夏に加入し、短い期間だったが存在感は絶大だった。ずば抜けた身体能力で飛び出し、GKと1対1に持ち込んだケースもしばしばあり、あとは決めるだけいうシーンも。しかし、そこで決めきれなかったことが“救世主”になりきれなかった要因だ。また、個の能力は高くても、周囲とリズムが合わなければ本当の意味で実力を発揮することは難しい。頭脳明晰なことでも知られるが、シーズン途中にJリーグ初参戦で、チームの戦術的なベクトルが定まっていない状況でJ1残留に導く活躍を求めるのは酷だろう。潜在能力は垣間見せていただけに、混迷したチームでのパフォーマンスだけで見切るのももったいないように思われる。

・ズラタン(浦和レッズ)

長期のケガに泣き、シーズンのほとんどを棒に振ってしまった。しかし、天皇杯決勝では後半アディショナルタイムにピッチに立ってキャプテンマークを巻き、勝利の笛を聞いた。スロベニア代表の主力として2010年の南アフリカワールドカップも経験したFWは2012年に大宮アルディージャに加入し、浦和では15年から4年間在籍した。もともと生粋の点取り屋ではなく、浦和でも4シーズンでリーグ戦15得点だが、屈強なフィジカルを生かして前線でターゲットになる仕事や、献身的なプレーが光る選手で、昨年のアジアチャンピオンズリーグでも貢献度は高かった。日本がすっかり好きになったというズラタンだけに、今後も浦和や日本との関わりを持ち続けて欲しいものだ。

・セルジーニョ(松本山雅)

J1を中心に観戦しているファンからすれば、セルジーニョと言えば「鹿島アントラーズのセルジーニョ」というイメージがあるかもしれない。しかし、松本山雅のJ2優勝&自動昇格に貢献したセルジーニョも忘れてはいけない存在だ。11得点という数字以上に前線からのディフェンスやシャドーからの飛び出し、サポートなど反町康治監督の求める戦術的な役割を全うしながら個でも輝き、前田大然とともに相手の脅威となった。166cmとひときわ小柄だが、体は強く、動きの1つ1つにシャープさがある。能力的には間違いなくJ1でも通用するが、松本がどれだけ劣勢に回らず、チームとして迫力ある攻撃を繰り出せるかどうかでパフォーマンスは変わってくる。

・レオナルド(ガイナーレ鳥取)

パワーとテクニックを兼ね備えるストライカー。J3では向かうところ敵なしという決定力で24得点を叩き出した。シュート決定率は28.2%という驚異的な数字であり、鳥取3位躍進の立役者の1人であることは間違いない。ベテランFWのフェルナンジーニョとの相性も非常によく、FW2人で33得点というゴール数は32試合制のJ3では出色のパフォーマンスだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。