巣鴨駅へは都営新宿線を新宿方向へ戻り、神保町駅で都営三田線に乗り換える。隣に座った初老の男性が熱心に競馬の出走表のようなものを見て書き込みをしている。その目は真剣だ。こういう人を見ると私は「勝ってますか?」などと茶化してみたくなるのだが、大人しく自分もラリー帳を読む。

 と、ん? ラリー帳の最後のページに「全6駅のスタンプを集めて賞品をゲットしよう! 引き換え場所→メトロ・エム後楽園3F丸善レジカウンター」とあるではないか! が~んっ! そうか、後楽園は最後に行かなきゃいけない駅なのか! 馬喰横山駅からは先に大門駅に向かうべきだった。仕方ない、巣鴨駅でとりあえず降り、その後に都営三田線をずっと南下して三田駅で乗り換えて大門駅へ行こう。やっぱり、ちゃんと説明を読んで計画しなきゃ。いや、人の助言は聞くものだ。

 うなだれて巣鴨駅で降り、スタンプを押し、問題を解き、ホームに戻った。フーッと大きくため息をつき、鞄から家で作ったおにぎりを出し、ベンチに座って食べる。こういうときはひたすら前を見て無心で食べるしかない。もぐもぐ。もぐもぐ。

 食べ終えて、また都営三田線に乗った。時計を見たら、11時57分。なんだ、まだ昼前だったのか! 焦ることはない。いいじゃないか、間違えても。乗り換えればいい。遠回りしても、やがて着くのだ。そりゃちょっと疲れるが、ゆっくり行こう。それが私の人生らしいじゃないか!

 気を取り直して大門駅に到着。また子どもが答えを叫んでくれたので、そのまま書き込み、都営大江戸線に乗り、月島駅経由で有楽町駅に向かう。こういうルート、通ったことなかったなぁ、発見だなぁと思っていたら、メトロの車内吊り広告に「Find My Tokyo!」と書いてあり、その通りだよ、と思った。外に出るって、発見がある。

 有楽町駅でも、また子どもが叫ぶ答えをそのまま書きこんだ。ずるい? そう、大人はずるい。子どもよ、それを本当に知るのはもう少し先だ。その時は少し痛みがあるだろう。

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スタンプラリーにかかった時間は…