「会場にはスカウトマンがいっぱい来てたんですが、彼女をすぐに売り出すのはやめて、しばらくのあいだ我々のイベントのアシスタント役として、手もとにいてもらったんです。プロとしては、この2月にデビューしたばかり」(『高3コース』1981年4月号)。

 和田氏はしばしばメディアに登場して、東大アイドルプロデュース研究会をアピールしていた。

 大学とアイドルの関係はいつ頃はじまったのだろうか。

 1970年代半ば、東京大に「山口百恵を守る会」が結成され、メディアで大きな話題になったことがある。やがて、キャンパスには政治的な立て看板が減るとともに、大学祭では歌手、タレントを招いて盛り上がるというブームが起こった。

 1980年代になると、学園祭の女王として、山下久美子、浜田麻里、白井貴子、森高千里、森川美穂、田中美奈子、川島なお美、杉本彩らが、キャンパスで学生を熱狂させた。東大アイドルプロデュース研究会は多岐川裕美を呼んでいる。

 大学でミスコンが開かれるようになったのもこのころだが、学内では「容姿で女性を選ぶのは女性差別」と批判する声があって、いまほど盛況ではなかった。

 やがて、多くの大学でイベントサークルが誕生し、広告会社と手を組みミスコンなどのイベントを仕掛けて「女子大生」を売り込む時代がやってくる。1990年前後のバブル期だ。その後、ミスコン優勝者がアナウンサーに採用されるという図式がしっかり定着し、今日にいたる。

 大学祭でのタレント登場は今も盛んに行われている。大学にすれば集客力が期待できる。タレントにとっても大学生ファンを増やせる。今年11月、立教大の学園祭でアイドルの橋本環奈が出演予定だったが、集客の度が過ぎてキャンパスには収容しきれないほどの人が集まった。けが人が出るほどで、橋本の出演は中止となる。

 キャンパスにアイドルを呼ぶ。和田氏率いる東大アイドルプロデュース研究会はそのさきがけとなったといっていい。現・入管局長の「功績」は大きい。

 和田氏はいま、在留する外国人を「プロデュース」する責任者となった。もちろん、昔のアイドルプロデュースを、今の外国人入国管理と結びつけて語るべきではない。別個の話である。

 と、わかっていながらも、入管局長として和田氏がどのような舵取りをするのかが気になる。外国人が日本人とともに楽しく働き、幸せに生きられる国をつくってほしい。

 なお、東大アイドルプロデュース研究会の創設者で初代会長は、精神科医の和田秀樹氏。和田雅樹氏の実兄である。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫