少なめヘアでぽっちゃり系の原さんだから、悠子が悠子になり、「鈴木家の嘘」は成功したと思う。

 朝日新聞に原さんのインタビューが載っていた。実生活でも3人の子の母で、子育て優先できた。だから真面目な女優でなかったかもしれないと振り返り、こう言っていた。

「いい役をずいぶん逃してきたと思います」

 すごくカッコいい台詞だ。自分に自信を持った人でないと言えない。

 昨春、3人とも独立したのを機に、子どもに「女優宣言」したのだそうだ。「これからは仕事を優先します」と。「鈴木家の嘘」のことを原さんは、「久々に『代表作です』といえる作品に出会えた。再デビューしたような気持ちです」と言っていた。

 子育てを終えた後、どうするか。シニア女性が抱える普遍的な悩みだ。「自分」を考える。「白髪染めをやめる」というのは自分を考え直すよいきっかけになる。シニア女性誌がグレイヘアを特集するのも道理なのだ。

 わかりつつも、グレイヘアに食傷気味なのは私だけではないはず。そうだ、グレイヘアより原さんだ。みんな子育て後、再デビューしたい。

 原さんのページをシニア女性誌で作りたい。きっと当たるはず。

 久々に、そんなことを思った。(矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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