引退を発表した貴ノ岩 (c)朝日新聞社
引退を発表した貴ノ岩 (c)朝日新聞社

婚約の記者会見をする貴乃花関(左)と河野景子さん=1995年2月25日撮影 (c)朝日新聞社
婚約の記者会見をする貴乃花関(左)と河野景子さん=1995年2月25日撮影 (c)朝日新聞社

 日本相撲協会は7日、大相撲の冬巡業中に付け人に暴力を振るった前頭・貴ノ岩(28)=モンゴル出身、千賀ノ浦部屋=の引退を発表した。

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「暴力根絶」を掲げる協会にあって、厳罰が避けられない状況で、責任をとる形で引退となった。

 ちょうど1年前、貴ノ岩は、逆の立場にいた。元横綱の日馬富士に巡業中に暴行を受け、頭部を負傷。師匠の貴乃花親方(当時)は、協会や日馬富士と全面対決。

 内閣府に「告発状」を提出し、民事訴訟で3000万円を超す賠償を求める訴えも起こした。

 だが、同じ部屋の貴公俊が付け人に暴行をしていたことが発覚するなどして、訴えを取り下げ。その後も、協会と対立が続いた貴乃花親方は、引退に追い込まれ、貴ノ岩、貴景勝をはじめとする弟子たちは、千賀ノ浦部屋に移籍した。

 そして、12月に九州場所で移籍したばかりの小結・貴景勝が初優勝。優勝の瞬間、抱き合って喜んでいたのが、貴ノ岩だった。

 お祝いムードに包まれる、部屋にあって、なぜ貴ノ岩は一転して、暴行の加害者となったのか。

 今年春場所から復帰して、十両優勝など好成績をあげて幕内に復帰していた貴ノ岩。

 だが、貴ノ岩を知る角界の関係者は内情をこう明かす。

「貴ノ岩は日馬富士が引退して以降、ずっと情緒不安定になっていた。朝ご機嫌だったが、夕方になると一言もしゃべらず部屋にこもりっきり。付け人が呼んでも出てこない。そういう日が続いていました」

 貴ノ岩が悩んでいたのは、故郷、モンゴルでの報道だった。とりわけ、貴ノ岩側が日馬富士に対し、民事訴訟をおこした時、「先輩にとんでもないことをする」「たいしたケガじゃないのに、3000万円とはなんだ」「日馬富士は引退して、責任をとっているのに、とんでもない」などの批判が殺到したという。

「貴ノ岩にはモンゴルに、兄と姉がいます。ご両親が早くに他界していて、兄が16歳年上で親代わりだった。兄や姉のところに、批判、文句を言う人が多い。とりわけ、日馬富士はモンゴルで英雄視されており、それを引退させた貴ノ岩という感じで、被害者なのに悪役扱いなのです。兄や姉は、心配かけないようにしていたそうですが、貴ノ岩の耳には『兄や姉が苦労している』という情報が入っていた。また、兄や姉が脅されたり、中傷されるようなこともあった。それを収めたいと、貴乃花親方に相談して民事訴訟を取り下げた。それでも状況はかわらなかった」(前出・関係者)

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