『M-1グランプリ』での暴言問題で審査員引退を表明した上沼恵美子 (c)朝日新聞社
『M-1グランプリ』での暴言問題で審査員引退を表明した上沼恵美子 (c)朝日新聞社

『M-1グランプリ』『R-1ぐらんぷり』『キングオブコント』など、世間の注目度が高いお笑いコンテスト番組は数多くある。12月2日に放送された漫才日本一を決める『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)は高視聴率を記録した。大会が終わった後にも、審査員の1人である上沼恵美子に対する芸人の暴言事件が報じられるなど、何かと話題を振りまいている。

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 そんな中で、昨年、新しいお笑いコンテスト番組が始まった。女性芸人だけが出場できる『女芸人No.1決定戦 THE W』である。昨年の大会ではゆりやんレトリィバァが優勝を果たした。今年の決勝は12月10日に行われ、日本テレビ系列で生放送される。

 2017年に『THE W』の開催が発表されたとき、世間では「なぜ女性芸人限定で新たに大会をやる必要があるんだろう」という疑問の声があった。確かに、お笑いはそもそも男女平等なものだ。『M-1』でも『R-1』でも、女性芸人は男性芸人と全く同じ条件でエントリーすることができる。女性芸人が出られるお笑いコンテストはすでにあるのに、なぜ新しいものを作る必要があるのか、という意見が出るのはもっともだ。

 私自身も、その時点では同じような思いがあった。だが、その後、昨年の決勝や今年の予選の模様を見ていて、この大会ならではの存在意義というものがだんだん分かってきた。ここでしか見られないものは確かにある。そう思えるようになってきたのだ。

 男女を問わず、芸人はテレビである程度の地位まで上り詰めると、ネタをやらなくなってしまうことが多い。なぜなら、ネタは売れるための手段である、という側面があるからだ。数多くのテレビ番組に出られるようになると、ネタを作る時間を確保するのが難しくなるし、それを披露する機会も少なくなってしまう。必然的にそこから離れていってしまうことになるのだ。

 だが、『THE W』では、ゆりやんレトリィバァ、ニッチェ、横澤夏子など、すでに売れっ子でありながら出場している芸人が目立つ。なぜ彼女たちがこの大会に出るのかと言うと、自分たちのネタが面白いということを世の中の人に知ってほしい、という気持ちがあるからだ。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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