「果物でもね、“青い香り”というのがあるんですよ。熟した時にはもちろん良い香りがするんですけど、熟しきると次は傷んでいくニオイも混ざってくる。青い香りは、本当に一瞬しか出ないんですけど、実に心を揺さぶられるんです。子どもに何万もするおもちゃを買ってあげていても、今買ったばかりの100円のおもちゃがあったら、そっちで遊ぼうとするでしょ。これも鮮度なんです。これはその時にしかない魅力ですけど、本当に大きなことでもあるんです」

 今後、「霜降り明星」には、漫才以外の仕事が確実に増えると予想する。

「今後は『漫才を忘れないこと』ですね。仕事の量で安心する。お金で安心する。ただ、それだけの仕事が何をきっかけで入ってきたのか。それは漫才なんです。漫才を作って、けいこして、お金を稼ぐのは本当にしんどい。食べて、飲んで、ああだこうだ言ってお金をもらう方が楽。ただ、それに自分らも慣れて、見る方も慣れたら『あれ、この人たち、何が面白かったんかなぁ…』となってしまう。それは『知っている』だけで『面白い』ではなくなってしまう」

 最後にカウス会長は、こう忠告した。

「だから、どれだけ忙しくても自分たちから『劇場に出してください』とお願いする。そうしていかないと芸人というニオイがなくなっていくんです。漫才師は漫才をしているから漫才コンビであって、漫才をしてなかったら、ただのオッサン2人やからね。ただのオッサンの話は聞いてもらえません」

「M-1」という山を最も若く登り切った2人が、今後、どこまでも続く芸能界という山脈でどんな旅路を展開するのか。注目していきたい。(芸能記者・中西正男)

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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