粕谷:幸いにして最初からいい医師に巡り合えましたからね。疑問に答えてもらう体制もできていたので、それ以上の情報を集めようとはあまり思いませんでした。インターネットの情報もネガティブなものが多くて気が滅入るので、途中から見なくなりました。上野さんは主治医との関係はどうでしたか?



上野:私もいい主治医に恵まれたと思います。医師選びは大事ですよね。ただ、究極的には当たりの医師に出会うことよりもハズレにぶつからないことが重要だと感じます。たとえば病気に関して、そのような病気の患者をほとんど診た経験がないとか、あるいは人間性に問題があるとか。言葉遣いや態度が横暴で患者の権利や意思は二の次だという古い体質の医師はまだいるということを間接的に耳にしますから。そういう医師に当たった場合は、我慢しながら治療を受けるよりも違う道を探した方が得策なんじゃないかと思います。

(構成/熊谷わこ)

※「65歳白血病と26歳精巣腫瘍 二人のサバイバーが語ったがんになってわかったこと」へつづく

粕谷卓志(かすや・たかし)/1951年、札幌市生まれ。朝日新聞社入社。横浜支局長、東京本社販売部長、同社会部長、役員待遇編集担当兼編集局長などを経て、2009年、取締役東京本社代表、社長室長。2012年テレビ朝日常務取締役、2014年テレビ朝日ミュージック取締役会長。16年6月から東日本国際大学客員教授。1992年、朝日新聞メディア欄の創設で新聞協会賞受賞。

上野創(うえの・はじめ)/1971年、東京都出身。1994年、朝日新聞社入社、2018年10月から東京本社・社会部の教育分野担当記者。1997年に肺に転移した精巣腫瘍が判明、退院後も二度再発。2002年、朝日新聞神奈川版での闘病手記をまとめた「がんと向き合って-一記者の体験から」を刊行。同作で、第51回、日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。