オリックスを退団することが濃厚になった金子千尋 (c)朝日新聞社
オリックスを退団することが濃厚になった金子千尋 (c)朝日新聞社

 今月21日、西武からフリーエージェント(以下FA)宣言していた浅村栄斗の楽天入りが発表され、24日には同じく西武からFA宣言していた炭谷銀仁朗が巨人入りを表明した。丸佳浩(広島)、西勇輝(オリックス)も近日中にその行方が判明すると見られている。ストーブリーグもいよいよ終盤戦かと思われていたが、ここへ来て一人の大物選手の移籍が浮上してきた。オリックスのエースである金子千尋だ。そこで改めて金子のここまでの歩みと今回の退団騒動を振り返りながら、移籍に最適な球団と復活の条件を探ってみたいと思う。

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 金子の名前が注目されたのは長野商2年の春に出場した選抜大会でのこと。当時は小柄な控え投手ながら抑えを任せられ、そのストレートの球筋の良さは強く印象に残っている。その後1年間で身長が10センチ近く伸び、3年時にはドラフト候補にも挙げられていたが社会人野球のトヨタ自動車へ進んだ。トヨタ自動車では、厚い投手陣の中で抑えとして頭角を現し、3年目の2004年に自由獲得枠でオリックスに入団する。しかし、入団前に右肘の故障が発覚し、それを理由にオリックス側が自由獲得枠を撤回すると報道されるなど、この時点でも揉める出来事があった。

 プロ入り後は3年目にリリーフとして一軍に定着し、本格的に先発に転向した4年目には二桁勝利をマーク。その後は、二度の最多勝、最多奪三振と最優秀防御率を一度ずつ獲得し、2014年には沢村賞も受賞するなど、リーグを代表する投手に成長した。しかし、そのオフに4年総額20億円とも言われる大型契約を結んでから成績が低迷してしまう。この4年間で二桁勝利はわずかに一度。今シーズンは開幕から4連敗を喫するなど出遅れ、4勝7敗という寂しい成績でシーズンを終えた。

 そんな金子にこのオフ待っていたのがチームからの大幅減俸だ。今シーズンの年俸は日本人トップの推定6億円と言われ、そこから5億円減の年俸1億円を提示されたというのだ。この条件に金子サイドも態度を硬化。既に複数回の交渉を行ったが状況は変わらず、25日のファン感謝イベント終了後には「自分の中では決まっている」と、自由契約での退団をほのめかすコメントも聞かれた。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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