西武を10年ぶりの優勝に導いた辻発彦監督 (c)朝日新聞社
西武を10年ぶりの優勝に導いた辻発彦監督 (c)朝日新聞社

 2018年のプロ野球ドラマがあった。セ・リーグでは圧倒的な強さでペナントレースを独走し、クライマックスシリーズでも貫禄を見せて問題なく日本シリーズまで進んだ広島。一方のパ・リーグは西武が独走したものの、王者ソフトバンクが“下剋上”で日本一への切符をつかみ、その頂点に挑む戦いでもビハインドからの4連勝で2連覇を成し遂げた。

 期待通り、あるいは期待以上の成果を残した球団や、今後につながるチームづくりが進んだ球団もあれば、収穫の乏しいシーズンを送ってしまった球団もある。その背景には選手の好不調、思わぬアクシデントや運といった要素もあるが、指揮官の手腕がもたらした影響もあるだろう。そこで今年1年を振り返り、全12球団監督の働きぶりを査定したい。今回はパ・リーグ編だ。

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【梨田昌孝→平石洋介(楽天)】 評価:E 

 昨季Aクラス入りして期待されたシーズンだったが、開幕ダッシュに失敗した。6月16日に借金が20に膨らんだところで辞任した梨田昌孝監督の責任は免れなかった。

 とはいえ、3本柱のうちエースの則本昂大が開幕から波に乗れず、昨季11勝の美馬学がシーズン途中に離脱。ブルペン陣も、昨季獅子奮迅の活躍を見せていた福山博之が不調とあっては指揮官もなすすべはなかったと言えるかもしれない。

 打線の方も、外国人選手が昨季ほどのパフォーマンスを発揮することができず、茂木栄五郎が不本意なシーズンに終わるなど中軸を固定できなかったのも大きい。また、ルーキーの岩見雅紀を今季中に1軍昇格させない方針を打ち出した発言直後に1軍に合流させるなど、不可解な点も多く見られた。

 そんな中で、梨田監督の後を受けて代行を務めた平石洋介監督は育成に特化してチームをうまく育てた。田中和基を1番・中堅手として一本立ちさせ、和製大砲として期待された5年目の内田靖人も来季への可能性を感じさせた。

 シーズン終盤に先発に再転向した松井裕樹など、来季はどういうピッチング陣で臨むのか。その手腕に期待したい。

【井口資仁(ロッテ)】 評価:D
 
 昨季から5つの勝利を積み上げ、最下位から5位と順位を一つ上げた。チーム成績が上昇したのはもちろん良かったが、井口資仁監督の今季の功績はレギュラーを多く作り出したことだろう。これまで、鈴木大地、角中勝也しかいなかったところへ中村奨吾、井上晴哉が居場所を見つけた。

 前政権下では伸び悩みの象徴とされていた二人がレギュラーとして確立できたのは大きい。なかでも、中村には「30−30(30本塁打、30盗塁)を狙える」とメディアを通じて伝えることでモチベーションを高め、プレーに自由を与えた。制約を解いたからこそ能力が発揮されたと言える。

 一方、反省点としては、ルーキー・藤岡裕大の遊撃起用にこだわりすぎたことかもしれない。外野手としてレギュラーに近い位置に君臨した平沢大河とうまく併用してもよかった。来季はゴールデンルーキー・藤原恭大が入団してくるだけに、競争は激化するはずだ。ベテラン陣の巻き返しも含めて、どう競争力を煽っていくか、楽しみなシーズンになるだろう。

【福良淳一(オリックス)】 評価:D

 2年連続、Bクラスのトップだが、決して褒められる順位ではない。

 昨季までクローザーを務めた平野佳寿がメジャーへ移籍したが、WBC代表の増井浩俊をFAで獲得しただけに、戦力体制が整っていなかったロッテに比べると、期待外れの感は否めない。

 打線の方でも、吉田正尚とロメロで主軸を形成したが、開幕前から懸案だった1、2番を固定することができず、どう戦っていこうとしているのかが全く見えなかった。また、FAで獲得した小谷野栄一やメジャー帰りの中島裕之をうまく使いこなせたとは言い難い。

 結局、チームビジョンが見えなかった。「長いイニングを投げる体力不足」という判断からローテーションを外した2年目の山本由伸がセットアッパーとしてフル稼働。昨年の監督査定では「1番・T-岡田」に疑義を呈したが、その起用も踏襲されず、行き当たりばったりの采配だったと言えよう。

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