そこで、次に大きな問題になるのは、報酬の隠ぺいはかなり多くの人が知っていたはずだということだ。報道では、西川広人社長らの関与については、全く報じられていない。

 この問題は、日産内部でかなり多くの人に認識されていたはずだ。例えば、株価連動報酬は、ゴーン氏はもちろん他の役員にも支払われ、他の役員については、有価証券報告書に記載されたが、ゴーン氏については、不記載だった。有価証券報告書は会社が作る資料の中でも最重要書類の一つ。そこに記載されていないのだから、おかしいと気づいた人はかなりいたはずだ。日本人幹部にも当然報告が上がっていたはずだが、明確にそれを止める人がいなかったのだろう。

 7年間もの間、不実記載を知りながらこれを訂正できなかった日産という会社はどういう会社なのか。現在は、捜査中だから詳しいことは言えないと西川社長はコメントを避けているが、この点は、今後しっかり検証していかなければならない。

◆日産社長の開き直りは問題

 私は、日産の西川社長の記者会見に非常に強い違和感を抱いた。なぜなら、日産という会社が、株主に大変な迷惑をかけたことについて、冒頭に真摯な謝罪がなかったからだ。まるで自分たちは被害者であるというような態度で、ゴーン氏を強く非難し、強い憤りを覚えるというような態度に終始していた。

 しかし、これは非常におかしなことだ。刑事事件としては、司法取引によって免責されたとしても、株主への責任は全く別問題だからだ。
 有価証券報告書の不記載がわかったら、すぐに訂正すべきだ。それを長期間放置したのは、株主に対して、会社として、あるいは、役員として、隠していたことになる。その間に事実を知らずに株を買い、株価が下がって大きな損を出している株主も多いだろう。社長は、彼らに対して、真っ先に謝る立場にあるはずだ。

 しかし、簡単な謝罪の言葉はあっても、決して、そんなに深い謝罪の意思表明はなかった。二言目には、ゴーン氏のせいだと言い募り、被害者を装うコメントに終始していたのは、非常に問題ではないだろうか。

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ゴーン氏の悪者化で日産批判を避けたい大手マスコミ