20日に対戦するキルギスは、ベネズエラより確実に中盤の強度が落ち、ボールも日本が持つ時間帯が長くなるはずだ。逆に引かれることで難しいシチュエーションも予想されるが、そうなった時はサイドバックの攻撃参加が重要になる。そこで注目したいのがレフティーの左サイドバックである山中亮輔である。

 横浜FMでは“偽サイドバック”と呼ばれる中盤インサイド寄りのポジショニングから積極的な攻撃参加を見せ、強烈な左足のミドルシュートが話題になっている。本来はサイドラインを駆け上がって高速クロスに持ち込むプレーも得意としており、彼が入れば左サイドの攻撃に幅と縦の推進力をもたらせることは間違いない。

「(中島とは)リオでやったので、その時の代表以来の再会」という山中だが、左サイドでの中島のプレースタイルは熟知しており、一緒に出ることになれば「(左の)アウトサイドを生かしたい」と明確にイメージしている。また、同ポジションで原口が出ても、中島とタイプは違うものの、逆に“偽サイドバック”の経験を発揮して、原口と山中でインサイドとアウトサイドを交互に突くなど、攻撃のバリエーションができそうだ。

 加えて山中はセットプレーの左足キッカーとしても重宝される可能性がある。9月には追加招集で選ばれた、横浜FMの同僚でもある天野純がコスタリカ戦の途中から左足のキッカーとして、短い出場時間で惜しいシーンも演出した。今回は「距離とか角度にもよると思うんですけど、チャンスがあれば僕もストロングとしているところなので」と語る山中が、そうした役割で存在価値をアピールすることが可能だ。

 アジアカップのような大会を勝ち抜く上では、なるべく多くのオプションを用意したい。その1つがセットプレーのキッカーだ。もし左足のキッカーを大会に連れていけなければ、攻撃面で少なからず不安を抱えることになる。そうした意味でも山中が左サイドからの攻撃参加とセットプレーの両方で存在感を示せれば、仮に長友がアジアカップに間に合うとしても、森保一監督にはうれしい悩みになるはずだ。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。