選手にとって長期契約を結ぶことのメリットは、その期間に野球に集中できるというものがある。しかし、その一方で大型契約を結んだことによる周囲からのプレッシャーは大きくなり、少し成績が落ちるとファンからもマスコミからも激しいバッシングを受けるというデメリットもある。巨人時代の清原などはまさにその典型例であり、その重圧をはね返そうと肉体改造にも励んだが全盛期の輝きを取り戻すことはなかった。もう一つは、やはり年齢的な問題である。実績があるということはそれだけ年齢を重ねているということであり、上記の例を見ても大半が35歳前後の年齢に結んだものである。この年齢で好成績を続けるというのはやはり難しいと言わざるを得ない。

 では、今年FA宣言をした4選手についてはどうだろうか。まずメリットは年齢的な若さである。炭谷は来季で32歳だが丸は30歳、浅村と西は29歳とまだまだこれからピークを迎える可能性がある。そして、全員が高校卒というのも特徴だ。金本や小笠原の例もあるが、一般的には高校卒の方が選手寿命が長い傾向にある。丸も浅村も通算2000本安打を十分に狙えるペースでヒットを放っているということも、モチベーションを維持するうえでプラス要因と言えるだろう。

 逆に、それぞれの不安要素はどうだろうか。炭谷はやはり打撃面がネックになる。過去2年間は2割5分前後の打率をマークしているが、通算打率は.212とレギュラーの捕手としてはかなり物足りない。さらに四球が圧倒的に少なく、通算の出塁率も2割5分を下回っている。獲得が噂される巨人では小林誠司も打撃の弱さを指摘されることが多いが、打率、出塁率、長打率の全てにおいて、炭谷の通算成績は小林より下である。小林以外にも大城卓三、宇佐見真吾などが控え、さらに阿部慎之助も捕手に復帰となると、今年以上に出場機会を得るのは難しい可能性が高いだろう。

 丸は今年故障で約1カ月離脱したにもかかわらず本塁打、打点でキャリアハイの成績をマークするなど打撃に関する充実ぶりは目を見張るものがある。その一方で気になるのが脚力の低下だ。今年は故障の影響もあったが、レギュラーに定着してからは最低となる10盗塁に終わり、成功率も5割と精彩を欠く結果となった。もともとホームランバッターではないだけに、脚力の衰えが全体のプレーに与える影響は大きい。かつてのように積極的に走れる状態を取り戻せるかが今後のカギとなりそうだ。

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浅村、西にも課題が…