しかし、グローバルな研究者、専門家養成という点では、国公立大がかなり健闘している。大学院(修士+博士課程)の外国人留学生数ランキング上位30校のうち20校が国公立大である。おもに中国や東南アジアから最先端研究を学ぶために日本へやってきており、彼らがどれだけ活躍するかが、そのまま日本の大学評価につながる。

 すべて英語による授業については、制度として導入するのは難しい大学がほとんどだ。

 全学で英語授業を実施しているのは、秋田県の公立大学である国際教養大学だ。学部では早稲田大学国際教養学部など。学部のなかのコースとしては、東京大学教養学部のPEAK(Programs in English at Komaba)、京都大学工学部地球工学科国際コース、慶應義塾大学経済学部のPEARL(Programme in Economics for Alliances, Research and Leadership)などがある。

 授業についていくためには高度な英語力、英語によるコミュニケーション力が求められる。学生は留学生、帰国生がやはり多いが、最近では海外生活未経験の学生が果敢にチャレンジするようになってきている。大学としてはこれらのコースを多くの日本人学生にとってほしいと望んでいる。そうでなければ、その大学のグローバル化につながっていかないからだ。

■注目される留学生派遣の必須化

 海外への留学生派遣については、多くの大学が積極的に取り組んでいる。留学生派遣には、交換留学制度による長期派遣(6カ月~1年間)や、夏、春季の短期語学研修(2週間~1カ月)などがある。

 いま、グローバル化の象徴として注目されるのが、海外留学派遣の必須化だ。学部、学科、専攻ごとで必須とする大学はいくつかあるが、これらは短期留学が多い。長期で全学部生が対象となっているのは、前出の国際教養大だけである。

 留学の目的は語学の習得だけではなく、留学先の大学で専門課程を学び単位を修得することにある。そのためには一定の英語力を身につけ、成績要件をクリアしなければならない。

 留学時期が就職活動と重なってしまう問題もあったが、最近は、企業側も留学経験者の採用に前向きで、海外からメールでエントリーシートを送れるなど手続き面でも配慮が窺える。そのため就職実績もきわめて良好だ。

 大規模大学では英語授業必須、全員海外留学を大学まるごと行うのはむずかしいので、学部、学科、専攻単位でこれらを導入しようという動きがある。グローバル化を見極める際には、大学というより学部などの単位でみると、わかりやすいかもしれない。

(文/小林哲夫教育ジャーナリスト)