年間100日以上海外を“旅行する弁護士”の「働き方改革」とは? 顧問企業70社には24時間対応 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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年間100日以上海外を“旅行する弁護士”の「働き方改革」とは? 顧問企業70社には24時間対応

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五嶋正風dot.#仕事#働き方
ネットさえつながば、世界中どこでも弁護士業務ができる(本人提供)

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ハンガリー・ブダペストの「世界で最も美しい」と言われるマクドナルドで(本人提供)

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世界遺産のカンボジア・アンコールワット遺跡で(本人提供)

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フィリピン・パラワン諸島の無人島で(本人提供)

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 目を瞠るような働き方改革を実践する藤井氏だが「別に世界旅行がしたくて今のスタイルに行き着いたわけではない」と話す。藤井氏は2007年に弁護士業務を始めた。最初に勤めたのは都心にオフィスを構える、大手の老舗事務所だった。「最初の一カ月は休みなし。終電帰りは当たり前で、事務所近くのサウナに泊まることもしょっちゅうでした」。深夜、帰りのタクシーを探してぼんやり歩いていたら、噴水の池に片足はまってしまった。「仕事は好きだが、これでは体を壊してしまう」と思った藤井氏は、その事務所を半年で辞めた。

 一つ事務所を挟み、2009年からは横浜の事務所に転職した。「ここは仕事量もゆとりがあって、楽しく働けました」。事務所の仕事をこなす一方で、独立に向けて個人案件も積極的に開拓していった。もともとITを活用したツールやサービスが大好きだった藤井氏。自然と顧客にIT企業が増えていった。「こうした会社はチャットやペーパーレスにも相性がいい。どんどんITを使った業務効率化を進めました」

 順調に個人案件を増やした藤井氏は2015年に事務所を設立した。だが独立して半年ほど経ったころ、はたと困った。仕事を効率化し、あらゆる業務をどこでも、自分でできるようにしたため、事務スタッフすらいない。「事務所や自宅で独り仕事をしていると、雑談もできない。退屈でした」。共働きの妻に相談すると、「一人旅にでも行ってみたら」と提案された。藤井氏の妻は学生時代バックパッカーの経験があったのだ。「私自身は一人旅経験もなく、効率化を進めたといっても本当に旅先で業務が回るか、わからなかった」。試しにやってみようと1週間、マレーシアのマラッカに出かけた。「やってみるとすごく楽しい。仕事も問題なく出来るし、これだと思いました」。こうして“旅する弁護士”は誕生した。2017年の海外滞在日数は111日に達し、今年は少し減るが、それでも100日くらいにはなりそうだという。

 旅ばかりして弁護士業の方はそこそこかといえば、そんなことはない。藤井氏が1人で抱える顧問企業数は約70社。ちなみに弁護士の約8割は顧問企業数10社未満(2015年、日本弁護士連合会調べ)と言うから、この数字のすごさがわかる。チャットなどを活用して面談をほとんどしないからこそ達成できる企業数なのだろう。

 旅する弁護士は質より量かといえば、それも違う。藤井氏の事務所の顧問料は月10万円から20万円。これも一般的な街の弁護士の相場、月3万円から5万円を大きく上回っている。「気軽に相談出来て対応が早いこと、そしてIT業界のビジネスモデルや法務問題に精通していることが評価されているのだと思います」と藤井氏は話す。

 ここまで“旅する弁護士”を実現した藤井氏の、「働き方改革」を見てきた。「弁護士という自律性の高い仕事だからこそ、実現できるやり方でしょ」という見方もあるだろう。確かに、顧客とのやりとりをすべてチャットにするといった戦術に注目すると、一般のフリーランスや会社員がそのままマネをすることは難しそうだ。だが基本の戦略的な考え方までさかのぼると、学びがあるように思える。「自分が得するだけでなく、顧客にも価値のあるやり方を提案する」ということだ。

 藤井氏の場合、ITツールやサービスの活用で業務を効率化することで、旅しながらどこでも仕事をするという、自らが望む働き方を実現している。一方で「いつでも、気軽に相談できる」という新しい価値を、顧客のIT企業に提供している。だからこそ多くの企業に受け入れられ、高い単価や売上を実現できているのだろう。「自分のやりたい働き方を実現しつつ、顧客などステークホルダーに向けて新しい価値も創造する」。これが本当の、働き方改革ではないだろうか。(五嶋正風)


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