「インターン中と違い、他のスタッフの力を借りずに海外のお客様に対応できるようになりました。ニセコがこういう地域でなければ私は英語を学んでいなかっただろうし、この道にも進んでなかったと思います」

■海外留学より安心な「ニセコ留学」

 こうした環境は、英語力をつけたい人にとって絶好のトレーニングの場になる。それに目をつけた行政が地元企業と取り組んでいるのが、「ニセコ留学」だ。夏と冬のそれぞれ約1カ月間、全国の大学生らがニセコの外資系企業などでインターンシップをしている。今年の夏は東京、大阪などから“留学”してきた18人の大学生が働いていた。

 関西外国語大学3年の米倉萌香さんは、コンドミニアムの開発や管理を手掛ける「MnK 緑の木」で働く。イギリス人スタッフらと、宿泊前の部屋をチェックするのが主な仕事だ。

「ニセコに来るのは海外留学よりハードルが低く、安心してチャレンジできました。とにかく英語を話さなければ始まらないという環境です。来て2週間ぐらいですごく英語を話すようになったという実感があります」(米倉さん)

 受け入れる側の企業にとっては、日本人学生への期待も大きい。

「当社は社員の半数が外国籍ですが、質の高いサービスを提供するには日本人が必要です。インターンシップを体験した学生が、卒業してニセコに戻ってきてくれたらうれしいですね」(MnK 緑の木・金裕子さん)

 ニセコ留学の事務局を務める北海道後志(しりべし)総合振興局の荒木祐亮さんは「学生だけでなく、社会人にとってもニセコ留学はおすすめ」と話す。

「セカンドキャリアに向けて英語力をつけたい人や、英語を使って日本で働きたい人にとって、ニセコはうってつけです。近年人気のフィリピン留学のように、『ニセコ留学』が英語を学びたい人たちにとっての選択肢になるのが理想です」

 パスポート不要の英語スポット・ニセコ。まずはこの冬、一度体感してみてはいかが。

(文/鈴木 顕)