観光客の中心は富裕層だ。彼らは冬になると、1泊10万円はくだらないコンドミニアムに1週間以上滞在する。地元のスーパーをのぞいてみると、4万円を超えるドンペリをはじめ、高級ワインがずらり。精肉コーナーにはフォアグラの塊が売られていた。「1回で70 万円近く買い物をした外国人がいた」「レジでブラックカードを出している人がいた」。地元の人に聞くと、景気のいいエピソードが出るわ出るわ。お金の使い方は桁違いのようだ。

 観光業、不動産業を中心にビジネスにも勢いがある。至るところで外資によるリゾート開発が進み、「ザ・リッツ・カールトン」「パーク・ハイアット・ニセコHANAZONO」といった高級ホテルもオープン予定だ。1棟数億円するコンドミニアムも、「シンガポールや香港の富豪が資産運用目的で買っていく」(不動産関係者)のだとか。それを象徴するように、地価上昇率の全国トップ3は、すべて倶知安町の地点が占める。

■希望の仕事に就くには英語力が問われる

 地元で働く住民にとっては、英語が話せるかどうかが仕事に直結する問題になってきた。前出のSMiLE Nisekoは、行政からの委託を受け、本格的な町民英語研修を実施している。タクシー運転手、居酒屋の店員、コンドミニアム建設に携わる建築業者など、仕事上必要に迫られた人たちが熱心に受講しているという。

「ほとんどの人にとって、ペラペラの英語は必要ありません。とはいえ、30 歳以下の若者は、希望の仕事に就くために、少なくともCEFR(セファール)のA2レベル(編集部注:英検準2級程度)を必要とされているのが現実。若い世代にとって、英語力は生きていくために必須のスキルです」(ベイリーさん)

 逆に言うと、英語力は希望の仕事を得るための武器になる。ヒルトンニセコビレッジで働く佐藤万優さんは、高校2年の冬、地元にあるこのホテルでインターンシップを経験。海外からの観光客への接客に苦戦し、「英語ができるとより仕事の幅が広がる」と実感した。高校のプログラムでマレーシアに半年間留学して英語を身につけ、昨年、社員として就職した。

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