ニセコアンヌプリ山頂から見下ろした羊蹄(ようてい)山。このビューも多くの外国人スキーヤーを惹きつける(北海道後志総合振興局提供)
ニセコアンヌプリ山頂から見下ろした羊蹄(ようてい)山。このビューも多くの外国人スキーヤーを惹きつける(北海道後志総合振興局提供)

 瀟洒なコンドミニアムが立ち並び、道路沿いの看板はほぼ英語。カフェに入れば店員も客もほとんどが外国人……。こんな場所が北海道にある。それがスキーリゾート・ニセコだ。英語が溢れる町の実態を、英語学習誌「AERA English 2018 Autumn & Winter」(朝日新聞出版)より一部を抜粋して紹介する。

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「ニセコは世界で最も有名なスキーリゾートの一つで、共通語は英語。数時間も滞在すれば、日本というより海外リゾートにいるように感じるはずです」

 東京の編集部に現地からこんな情報が届いた。ニセコの名は知っていたが、それほどグローバル化が進んでいるとは、にわかに信じがたい。確かめるべく、ニセコへ飛んだ。

■世界の富裕層が集う、人種のるつぼ

 情報をくれたジュリアン・ベイリーさんを訪ねた。ベイリーさん夫妻は12年前にロンドンから移住し、語学学校「SMiLE Niseko」を経営している。英語を必要とする社会人や子どもたちに英語教育を提供しているほか、外国人住民向けに日本語も教えており、ニセコの変化をつぶさに見てきた。

「冬になれば語学学校で英語を学ぶ必要がないほど、町じゅうに英語が溢れます。今のニセコは外国人によって再開発された、外国人観光客向けの観光地。ニセコがこういう状況になっていることをいちばん知らないのは、東京の人かもしれません」(ベイリーさん)

 倶知安町、ニセコ町を中心とするニセコエリアの人口は約2万。それに対し外国人宿泊客は、冬をピークに年間65万人(延べ数)を超える。ニセコに外国人が増え始めたのは約15年前。世界有数の雪質とも言われるパウダースノーが、オーストラリア人スキー客を魅了した。評判は口コミで世界に広がり、イギリスのスキー雑誌で「世界の行くべき10大リゾート」の一つに選ばれるほど知名度が上昇した。

 近年は英語を公用語とする国や地域からの観光客が増加。オーストラリアのみならず、香港、中国、シンガポールといったアジア圏も多い。人種のるつぼと化したニセコで、日本人観光客はone of them、というよりむしろ少数派といえる。

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