■おじさんが若者を叱るという設定が古い

 たしかに、本作においては吉岡里帆以外にも主題歌がHYDE(49)の作曲ということで話題になった。さらに、松尾スズキ(55)や田中哲司(52)などのベテラン俳優も脇を固め、人気急上昇中の千葉雄大(29)を起用するなど、引きのある仕掛けはたくさんあったはずだ。

「実際、鑑賞してみると、やはり作品自体はかなり辛いものがありました。しかし、吉岡さんだけに責任があるようなやり方はちょっと気の毒ですね。『どういう気持ちになりたい人が観るものか』というターゲットの設定が微妙だったかなと思います。『感動』でもなく『爆笑』もしない。吉岡さんは可愛いけれど、テレビでも見られるのでお金を払ってまで映画館で観る理由はないと思いました」(同)

 一方、映画ライターのよしひろまさみち氏がストーリーや脚本についてこう評価する。

「私自身は心情的にかなりこの作品に好意的なんですが、残念ながら脚本が微妙だったことは否めません。物語自体は小ネタの応酬でそこにしっかり振り切っていければよかったんですが、三木さんらしいドラマ部分がすこし余計で、中途半端になってしまった。『時効警察』などでみせた三木さんのコメディーセンスと阿部さんの演技が融合してうまくハマればよかったんですが……。あの作りなら徹底的に笑いに振り切ったほうがもうすこしよかった。また、おもいっきりパンクロックのおじさんが、若くてか弱いシンガーを怒鳴り散らすっていう設定も、今の若い人の感覚から言ったら古いですよね。せめてキャラクターの設定が逆だったら良かったんじゃないでしょうか。阿部さんも吉岡さんも脚本以上に演技には力が入ってました。吉岡さんにとっては阿部さんという今の俳優界にもなかなかいないような演技者と出会えて、しっかり挑戦していたと思います」

 作品の不調は誰かひとりの責任というわけでもないのに、周りのやっかみなどもあり責任を押し付けられてしまった吉岡里帆。彼女の次回作での活躍を期待したい。(ライター・黒崎さとし)