活字文化を守るというのは、印刷物を守るという意味だ。しかし、それは、古い時代の技術を前提にした議論で、本当に重要なのは、そこに含まれている情報である。インターネットで得られる情報も印刷物の情報と同様に価値があり、その重要性は日に日に高まっている。ネット情報の方が新聞より早いこともあるし、新聞が政権忖度で報じない情報がネットで得られることも多い。ならば、新聞だけでなく、スマホ利用料金も軽減税率の対象にすべきではないかという議論もありそうなものだが、そうした議論は新聞には絶対に出て来ないのだ。

■アベノミクス失敗を認めて税と社会保障の一体改革をやり直せ

 冒頭に述べた通り、消費増税対策がこれほど迷走する最大の理由は、6年間のアベノミクスが失敗し、結局日本経済は増税に耐えられる状況にはなっていないということだ。そんな中で、政官財そして、マスコミも入り交って、それぞれの利権獲得のために増税を悪用しようとしている。財政再建にもたいして貢献せず、庶民の生活向上にも貢献しない。ただ、利権拡大のための増税というのが実態だ。ならば、いったん中止にして、2012年の与野党で合意した「税と社会保障の一体改革」のための制度設計の議論をやり直すべきではないだろうか。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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