派遣労働地獄から抜け出せない35歳男性の職歴「夢は月給20万円」 (4/4) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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派遣労働地獄から抜け出せない35歳男性の職歴「夢は月給20万円」

連載「ルポ・ハラスメント職場」

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小林美希dot.#小林美希
※写真はイメージです(写真/getty images)

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 正則さんは「就職はタイミングが重要なのではないか。いったん、その年齢なりのレールから外れるとやり直せない。自分は自業自得だ、失敗したな。という気分になる」という呪縛から逃れられない。

 総務省の「就業構造基本調査」では、2017年時点で35~44歳のうち、初職(初めて就いた仕事)が非正規雇用労働者の場合、現在の雇用形態が正社員は76万6500人、非正規雇用が164万100人で、非正規が正社員の倍以上となる。同様に、初職が正社員の場合は、正社員が779万6300人、非正規が187万9700人で正社員であるほうが3倍以上となる。社会人のスタートが非正規か正社員かで、分かれ道となるケースが多いことが伺える。

 正則さんは、「もしも戻れることなら、10年くらい前に戻って、最初からフォークリフトの仕事をしたかった。地道にやっていれば、それなりのキャリアを積めたのではないだろうか」と、思えてやまない。そして、今後について「フォークリフトに乗ってまだ半年。まだちゃんと地面を踏みしめてもいないのに、ステップアップなど考えられない。仕事の精度を上げて、きちんと地面を踏みしめないと。それで時給が少しでも上がればいい。望みは、それくらいかな」と静かに語った。

 派遣社員でも担当エリアを任され、配置や荷物のスケジュール管理を行っている人もいる。いつか、その立場になることができるだろうか。しかし、倉庫が広すぎて全体が見えないように、先が見えない。目の前のことを一生懸命やるしかない――。正則さんは、もう、正社員という道は諦めている。

 35~54歳の非正規雇用労働者は「中年フリーター」とも呼ばれる。就職氷河期に煽りを受けた世代だ。2015年に三菱UFJ総合研究所が試算したところ、既婚女性を除く中年フリーターは273万人に上るという。政府は、外国人労働者の受け入れ拡大を目指しているが、それよりも先に打つべき雇用対策があるのではないだろうか。中年フリーターを諦めや絶望から救い出さなければならない。(ジャーナリスト・小林美希)


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小林美希

小林美希(こばやし・みき)/1975年茨城県生まれ。神戸大法学部卒業後、株式新聞社、毎日新聞社『エコノミスト』編集部記者を経て、2007年からフリーのジャーナリスト。13年、「『子供を産ませない社会』の構造とマタニティハラスメントに関する一連の報道」で貧困ジャーナリズム賞受賞。近著に『ルポ 中年フリーター 「働けない働き盛り」の貧困』(NHK出版新書)、『ルポ 保育格差』(岩波新書)

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