【5回表2死二塁】

 中4日先発の千賀滉大は、4回まで3安打1失点。ゲームメークという観点では、十分な序盤の内容だ。ただ、3四球が物語るように、コントロール面に不安が垣間見えた。

 5回1死から、広島の1番・田中広輔に中越えの二塁打を許し、得点圏に同点のランナーを背負った。続く菊池涼介を空振り三振に打ち取ったところで、指揮官は一塁側ベンチを出た。あと1人で勝利投手の権利をつかめる場面での交代。球数も84球と、先発投手のメドともいえる100球にも満たず、シーズン中ならまずあり得ない。

 それでも、代える--。

 3番・丸佳浩はシーズン39本塁打、97打点。ただ、この打席直前まで、シリーズ通算18打数2安打、9三振の大不振に陥っていた。それでも左腕のリバン・モイネロをぶつけることで「1点もやらない」というベンチの意図を明確に示したわけだ。

 ただ、この一手は裏目に出る。

 3球目の149キロ直球を完璧に捉えた一打は右翼席へ一直線。シリーズ1号となる逆転2ランで広島に再逆転を許してしまう、まさかの試合展開になった。

「(千賀は)制球に苦しんでいるところがあったんで、代えたんですが……。すみませんでした」

 試合後、指揮官は“謝罪のコメント”を発している。だがそれでも、指揮官は決して「動き」を止めなかった。

【8回表2死走者なし】

 5回1死満塁から、柳田悠岐の投ゴロの間に1点を奪い、再び3-3の同点に追いつくと、6回からは「第2先発」として脚光を浴びている武田翔太がマウンドへ。ここまでシリーズ3試合・計4イニングで無失点の右腕だが、6回に広島の8番・會澤翼に1号ソロを浴び、またもや勝ち越された。

 二転三転する試合展開。指揮官はめまぐるしく、継投策を繰り出していった。同点の7回2死一、二塁で左腕・嘉弥真新也、8回からはアンダースローの高橋礼と、小刻みなリレーで広島の攻撃をしのいでいく。

 高橋礼が順調にアウト2つを奪った。続く打者は會澤。この日、本塁打を含む2安打と当たっているとはいえ、右のアンダースローと、下位打線の右打者。ここは高橋礼がそのまま投げてもおかしくはない場面。むしろ、延長戦が想定される展開とあれば、投手を少しでも温存したいところだ。

 それでも、また代える。

 しかも、ここで告げたのは「森唯斗」。ストッパーを、8回途中走者なしの場面で投入してきたのだ。

「あそこで(會澤を塁に)出されるのがいやだった。あそこは、何とか切らないといけない。そうすれば、次の回は9番バッターからですから」

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