一同:(笑)

須本:更に調べると、戦後、南太平洋の島々やフィリピンといった国々を南方の国をものすごく支援したり、北方領土の買い付けにも行ったりしている。あの人の理論は、カネの出所というのはどこでもよくて、金を持っているからできることをする。結局、この人が悪または正義の志のどちらを持っていたかは、亡くなってしまった今となっては判断がつかない。

塩田:事実というのは1つだけど、真実というのは複数ある。どの角度から笹川さんを見るか。見る角度によってぜんぜん違うということを、我々は余裕をもって受け入れるということが大事になってくると思います。人は自分の生活に関わった瞬間に、「それが全てだ」みたいな感じで視野が狭くなってしまう。そこを一歩引いて、別の一面があるかもしれないと、きちんと理解して冷静に距離を保っていくというのが、フェイクニュースをワンタップやワンクリックで拡散させないための心構えであると思いますし、常に人生は白か黒かではなく、グレーであるということを理解できているかが大事なのではないでしょうか。

塩田武士(しおた・たけし)
新聞社在職中の2010年『盤上のアルファ』で第5回小説現代長編新人賞でデビュー。同作で第23回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。2016年刊行の『罪の声』は第7回山田風太郎賞を受賞、「週刊文春」ミステリーベスト10国内部門第1位に輝く。

須本壮一(すもと・そういち)
1980年第19回『週刊少年サンデー』新人コミック大賞佳作でデビュー。代表作に北朝鮮拉致問題を扱った『奪還』『めぐみ』がある。百田尚樹氏原作『永遠の0』『海賊とよばれた男』のコミカライズ版の作画や、塩田武士氏原作『罪の声』のコミカライズ版の作画を担当。