「“幼いほど性的に価値がある”と考えることは、個々の欲望の問題ですから誰も口を挟めない。が、その欲望に叶うようなアイドルを提供することは非常に危険です。しかも、全国紙が特集を組み、評論家たちが魅力を語る。彼女たちに政治を学習させる企画もありました。これは一種のマンスプレイニング(男性の上から目線の説明)。こういった少女的な幼さや無知を容認する傾向がJKビジネスの発展に影響していると感じています」

 週刊朝日での『路上のX』の連載は終わったが、今後続編を予定していると桐野さん。1冊完結のつもりだったが、少女たちの終わりのなさを感じ、再び筆を執ることを決めた。時代が抱える問題を一歩先取りしてきた桐野さんだが、自分の作品から、「父親」に関する記述があまりないことに気付かされたという。

「私の作品には“お父さん”があまり出てこない。父親は、妻や娘の抱える女性の問題を共有できないのだと感じます。フラリーマンという言葉もありますが、彼らも家族の問題にコミットしたくないのだと思います。妻や娘の問題を一緒に考える気がない。だから、どうしても、母子関係の親密さにはじき出されてしまう部分があるのでしょう」

 “身近な大人”が少女たちの周りからいなくなった今、フィクションを通して少女たちに寄り添い、現実を訴えかけることが“一歩先”を変えるのかもしれない。(AERA dot.編集部/福井しほ)

※10月13日のシンポジウム発言を再取材した

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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