2017年10月には、神奈川県座間市のアパートで若い男女9人が殺害される「座間9遺体事件」が起きた。うち8人は若い女性で、自殺願望を抱いていたという。15歳から26歳までの若い女性を狙った犯行だった。容疑者と女性たちの関係がSNS上で始まったことも世間に大きな衝撃を与えた。桐野さんも「信じられなかった」と当時を振り返る。

「昔は話を聞いてくれる大人がどこかにいたものです。おじやおばやいとこなど、親戚も近くに住んでいた。でも、今の子どもたちは孤独に漂流している感がある。貧困家庭も増えて、児童虐待が問題になり、家庭の中で表に出ない何かが起きていると感じています。この事件も、これだけたくさんの若い人がSNSだけで相手を信頼し、自宅まで行ってしまうことが現実に起きている。彼らにとってのリアリティは、SNSと地続きで、私たちが想像しているものとは違うのだと思いました。『自殺願望』と検索すると、『一緒に死にましょう』という人がたくさん引っかかる。そこにポンと行ってしまうんでしょうね」

 寄る辺のない少女たちが悪意を持った大人にからめとられてしまう現実。著書『路上のX』では、ネグレクトや虐待などの問題を抱え、家出した3人の少女が描かれている。今夜寝る場所を求めてJKビジネスの世界に踏み込み、性を搾取されていく姿は日本社会のリアルを映し出す。1980年代の女子大生ブーム、1990年代の女子高生ブームを経て、「ますます低年齢化が進んでいるように思う」と桐野さんは指摘する。

アイドルがなぜ幼いふりをするのかということです。前髪を切り、ツインテールで下着の見えそうなミニのギャザースカートで歌い踊る姿はまるで小学生です。大人に演出を強要されていることもあると思いますが、彼女たちもそれがウケることを知っています。とても無防備で、何かが起きてから危うさに気付く。リアルな世界の恐怖が想像できないのでしょう」

 同時に、こうしたアイドルのイメージがJKビジネスの発展につながりかねないと見ている。

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“幼いほど性的に価値がある”背景にあるもの