しかも、丸も初戦で4打数無安打、2三振と精彩を欠き、この日も1回の第1打席ではバンデンハークに157キロの剛速球で空振り三振に仕留められていた。西武戦と同様に広島打線の分断作戦がうまくはまりかけていた矢先に、田中が、そして丸までもが息を吹き返してしまった。

 こうなると、止められない……。

 5回1死一塁から、丸はチャンスを拡大する右翼線二塁打。これで二、三塁とされ、4番の鈴木誠也にセンター前へ2点タイムリーを運ばれ、前半で5点のビハインド。こうなると、反撃意欲も失せてしまう。ジョンソンから6回まで1安打しか打てず、5試合ぶりのスタメン出場となった松田宣浩が7回に中前タイムリーを放ち、1点を返したのがやっと。8回から登板の左腕、ヘロニモ・フランスアにも1イニングをきっちりと無安打に封じられ、初戦から計3イニングでヒット1本のみ。短期決戦で早くも“苦手”が生まれてしまったのもマイナスだ。

 攻撃型布陣のはずが、相手の打線を目覚めさせてしまうという何とも皮肉な敗戦。ただ、田中や丸と同様、初戦はノーヒットに終わっていた4番・柳田悠岐にも、7回にシリーズ8打席目にしてやっと初ヒットが飛び出し、「1本出れば落ち着く」と工藤監督。1敗1分けでの敵地スタートとなったが、30日の第3戦からは「DHありの戦い。普段通りの戦いができるから」という指揮官の視線は、本拠地・博多での巻き返しへとすでに向けられている。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。