「一方で首都圏、特に東京はまだまだ子どもも専業主婦世帯も多い地域なので、幼稚園側の変化が少なく、園によっては子どもが小さいうちは母親が家庭にいたほうが良いという母性神話が強い場合もあります。就労家庭の支援をするという意識が施設長にない幼稚園では、共働きの親子が肩身の狭い思いをしてしまう可能性もあります」

 見学の際には、施設長に「毎日◯時まで働いているんですが」と話してみて、顔色が曇ったり、「うちは専業主婦のご家庭が多いんですよ」と言われたりしたら、あまりオススメしないという。

 そもそも「幼稚園=教育施設」、「保育園=福祉施設」という違いがあり、家庭と園の距離も違う。

「保育園から幼稚園に移った親から『先生との関わりが少ない』という不満の声を聞いたことがあります。保育園では1日をどう過ごしたかという細かな情報も共有していますが、幼稚園は保育園に比べて短時間なので、親が子どものことを把握していて、幼稚園に依存していません。基本的に幼稚園は『生活面のことについては家庭の責任で』という考え方が強いと思います」(普光院さん)

 憧れの幼稚園に入ることができたとしても、親が「家庭の責任」を負担に感じれば、子どもにとってもいい環境とは言えないだろう。長く保育現場を取材し『子どもがすくすく育つ幼稚園・保育園』の共著がある、ジャーナリストの猪弘子さんも、幼稚園か保育園かという種類ではなく、内実をきちんと見極めて、シビアに選んでほしいと話す。

「共働きでも幼稚園に通うという選択肢はありだと思います。ただ、保育の内容や、自分たちがどれだけ園に関わることができるか考えて選ぶべきでしょう。幼稚園では、終わったあとに友達の家に集まって遊んだり、平日の昼間に保護者の活動があったりします。お付き合いや同調圧力も含めて、やっていけるのかチェックしましょう」(猪熊さん)

 会社勤めの場合、子どもの病気で仕事を休まなければならなくなることも考慮して、お付き合いを含めた平日の活動に対応できるのか考える必要がある。その園に子どもを通わせているママ友に様子を聞いてみたり、フルタイムの共働き世帯が何人ぐらいいるのか園に確認してみるのも手だという。

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「保育園は教育をしない」は誤解