大川陽介さん(撮影/掛祥葉子)
大川陽介さん(撮影/掛祥葉子)
松本すみ子さん(撮影/掛祥葉子)
松本すみ子さん(撮影/掛祥葉子)

 先の見えない時代。幸せに生きていくには、どんな働き方がいいか。そこには世代を超えた共通点はあるのだろうか。ミレ二アル世代の大企業社員が集まる「ONE JAPAN」共同発起人の大川陽介氏と、定年前後の世代を束ねるシニアライフアドバイザーの松本すみ子氏。数多くのビジネスパーソンを間近で見てきた2人が語った新しい“働き方論”――。

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大川 僕は富士ゼロックスで本業をやりながら、社内にゆるいつながりをつくるために2012年に「秘密結社わるだ組」という有志団体を立ち上げました。「元々は若手のためにつくっていたのですが、蓋を開けてみるとおじさんたちも寄ってきた(笑)。「お前たちはまだまだいい子ちゃんだよ。俺たちの方が、もっと悪かったぜ」と絡んでくるんですよ。若い僕らにとって「おじさん」や「部長・役員クラス」は雲の上の存在。彼らが昔何をやってきたかなんて分かりません。

松本 その世代の人たちは私と同世代。とんでもなく「悪いこと」をやっていますでしょう?

大川 はい、彼らから聞く当時の話はすごく刺激的でした。「それ、クビじゃないですか」と思わず言ってしまうようなものばかりで。

松本 70歳くらいの団塊の世代が現役時代だった頃は、日本も高度成長期で上り調子。今みたいに経済システムや会社組織のルールなど、色々なものができあがっていませんでした。たとえば商社に入社すれば、海外のたった一人の駐在員になったりして好きなことができた。それで実績を挙げて日本に帰ってくるとか、面白い仕事がたくさんできたわけです。大川さんのような世代は、合理的な組織形態を取るようになってきたりと、むしろ大変だという気がします。

大川 僕が富士ゼロックスに入社したのは2005年。08年にリーマンショックがあり、そこから会社も効率化が加速しました。富士ゼロックスの名経営者、小林陽太郎が残した「よい会社」構想にある「強い」「やさしい」「おもしろい」という言葉に惚れて僕は入社した世代ですから、働いている人が面白いと思えるのが大前提だと思っていました。でも、入社してすぐに見た先輩の背中は、必死で効率化してなんとか会社を立て直さないといけないとやっている姿。それしか見ていないので、ゼロイチで何かを創るという背中を見たことがない。40代、50代の先輩たちもそのやり方を分からないし、やれと言われてもどうしていいか分からない。

松本 今の大企業、たとえばホンダやヤマハにしても、町工場からはじまって規模を拡大してきました。その過程で入社した人たちは、本当の意味で面白い仕事をしたのではないかと思います。自然な流れの中で、おじさんたちは、ゼロイチで何かを創るということができた。でも、大川さんたちが会社でやる仕事の多くは、与えられた仕事ですよね。たとえ自分なりの発想があったとしても、決められたやり方からはみ出したらいけない。だから大川さんは、本業とは別の自己実現の場として「わるだ組」のようなつながりをつくったのだと思います。

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本業の仕事だけに没頭するのも善し悪し