オナラやオシッコが頻出する最低な展開になってきた訳だが、読者諸兄、ここはちょっと待って欲しい。俺もさんざん待ってるんだから、皆さんも待って欲しい。実は、「暇はそう悪いものでもない」と俺は思っている。前述の流れからして情緒不安定を疑われそうだが、そして若干の情緒不安定は否めないが、暇は「その人に与えられた自由時間」だとすると、まさに暇の使い方や過ごし方は、「その人次第」ということになる。

 待てと言ったわりには大したことを書いてないが、ただ実際、ドラマや映画の待ち時間に、書き物や考え事が案外はかどることはよくある。香川さんもそういう意味で「中空きが好き。昆虫の次に好き」と言ったんだと思う。ごめんなさい「昆虫の次に好き」は嘘。それはさておき現に今、こうやってコラム(この文をコラムと言えるかはさておき)を書いていて、待ち時間をそれなりに有効に使えている。

 今までの僕の役者としての仕事時間全体を10とすると、多分そのうち8くらいは待ち時間ではないだろうか。ヘタをすると9かも。僕に限らず、多くの俳優さんはそれくらいの感じだと思う。今は控室に1人だが、他の役者さんがいる時は、世間話やら真面目な話、様々な話をする。男優、女優、子役、若い俳優、先輩俳優、色んな人と色んな話をする。そこで予想もしなかった刺激を受けられることもある。待ち時間、暇をどう過ごすかはかなり大事なことなんだと思う。3時間待って撮影が10分で終わっても、3時間の待ち時間に実りがあれば、その日は、良き日となる。

 いま控室に若いスタッフが、「お待たせしてすみません」と言いに来た。「大丈夫だよ、コラム書いてるから」「コラムやってるんですね」「うん。隔週でね」「え?隠し部屋?」……うむ。今日は良き日だ。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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