「先方のキャンパス使用の予定で会場を決めていますが、近年は大規模大学の自大学志願者増の影響で、確保しづらくなっています。ホールやビルなどの貸し会議室も都市圏では需要逼迫で予約が取りづらく、会場確保が年々難しくなっているのが現状です」(大阪医科大学入試広報部)

 兵庫医科大学の大阪会場は、10年から毎年、展示場「インテックス大阪」で実施していたが、19年は「神戸国際展示場」で実施する。

「例年、他大学の入試日程も考慮して、18年は1月24日に実施しました。19年はセンター試験が18年より6日遅いため、1月30日に試験日を設定したところ、インテックス大阪に先約があったため、兵庫県内の会場に変更しました。20年以降の日程と会場は未定です」(兵庫医科大学・鈴木敬一郎副学長)

 と、会場をおさえるだけで、まさにひと苦労。杏林大学の担当者も「18年入試を行った五反田TOCビルの予約がとれなかったため、グランドプリンスホテル新高輪で実施する」と話した。

 大阪に2校舎、東京に1校舎ある進学塾ビッグバンの松原好之代表は、大阪の生徒の受験についてこう話す。

「東京にいれば、川崎医科大学以外の大学は受験できますから、たくさん受験する生徒は東京のホテルに連泊して、東京会場で受験しています。試験日の前夜には、大阪や東京の講師がホテルに泊まり、翌日受験する大学の予想問題などの『ファイナルチェック』を行っています」

 大阪の医学部進学予備校メビオも、入試会場が大阪以外の場合には、複数の講師とスタッフが同行し、宿泊先ホテルで直前対策講義を行う。「朝食付き」ならぬ「講師付き」の宿泊といった手厚い対応は、もはや珍しくない。

 会場の確保ひとつで学生、大学、予備校などが振り回される現状に、冒頭の医学部幹部も「本当に神経使いますよ」とポロリ。問題続きの医学部入試だが、しばらくは“ハコ探し”でも苦労しそうだ。

(文/庄村敦子)