ソフトバンク・甲斐拓也 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・甲斐拓也 (c)朝日新聞社

 もはや“記録的な猛打”だ。

 クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ4試合でソフトバンクが挙げた「38得点」は、2008年の西武がセカンドステージ(当時の呼称)でマークした「32得点」を上回り、同一ステージでのCS史上最多得点となった。しかもまだ今ステージは終わっていないため、さらなる記録更新は間違いない。4試合を終えた時点でのチーム打率.338も、2013年の西武が第1ステージで記録した.337を上回るCS史上最高打率でもある。

 今季のレギュラーシーズンで12球団トップとなる.273のチーム打率を誇る西武を相手に、ソフトバンクはさらに上をいく猛打で今ステージの戦いを圧倒している。勝った3試合はいずれも2ケタ安打をマーク。第4戦も、1回に4番・柳田悠岐の先制2ランに始まり、2回は9番・甲斐拓也が2ラン。2点リードの7回には、2死満塁からアルフレド・デスパイネの遊撃内野安打で5点目、続く中村晃が押し出し四球を選び6点目、さらに7番・内川聖一がレフトへ2点タイムリーと、一挙4点を奪って試合を決めた。内川はこの一打でCS通算26打点、同47安打とし、いずれもCSでの個人最多記録を塗り替えた。

 まさしく、打ちまくる鷹打線。その一方でもちろん、投手陣の踏ん張りを見逃すことはできない。ソフトバンクが制した今ステージ3試合での失点は10、防御率3.33。今季のレギュラーシーズンで、西武との25試合のチーム防御率は5.38。しかも敵地・メットライフドームでは12試合でわずか3勝。幾度となく煮え湯を飲まされてきた宿敵をきちんと抑え込んでいるのは、数字がしっかりと“証明”しているのだ。

 第4戦も、3回に9番・木村文紀に許した1号2ランのみの2失点。派手は「打」の方に目が行きがちだが、7回までマスクをかぶった捕手・甲斐拓也の連日の奮闘がソフトバンクの進撃を支えているのは間違いない。

「シーズン中、打たれていますし、やられてきています。その分、しっかり投手もそうですが、準備はしてきましたから」

 同じ過ちは繰り返さない――。甲斐の決意が、その言葉ににじみ出ていた。

 首位・西武に3.5ゲーム差に迫り、カード3タテなら逆転優勝の可能性が大いに膨らむ先月15~17日の敵地3連戦で、屈辱の3連敗。さらに西武の優勝マジック「5」で迎えた同27~29日の3連戦でも、最初の2試合で連敗、「M1」とされた29日に勝って、目の前での胴上げを阻止したことだけが、せめてもの意地だった。その負けた5試合で、立ち上がりの3イニングでの失点は計15回で24失点。よーいドンでずっこけて、追いつけないままに戦意喪失という悪循環。勝ちたい、負けられない、そんな気持ちばかりがどこか空回りしていた。

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西武打線を封じる鷹バッテリー