死んだら負けなのか……(※写真はイメージ)
死んだら負けなのか……(※写真はイメージ)

 ダウンタウンの松本人志さんが自殺に対する持論をツイートし、話題になっている。自身も不登校経験者で、いじめ裁判や当事者の取材を重ねてきた全国不登校新聞の編集長、石井志昂さんは違和感を持っているという。

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 話題になっている松本人志さんのツイートはこれです。

「自殺する子供をひとりでも減らすため【死んだら負け】をオレは言い続けるよ。。。」(@matsu_bouzu)

 農業アイドル「愛の葉Girls」の元メンバー・大本萌景さん(当時16歳)が自殺した問題を受けて、10月17日の深夜にツイートされたものです。松本さんは、10月14日にもフジテレビ系「ワイドナショー」で「ついついかばってしまいがちなんやけど、僕は『やっぱり死んだら負けや』ということをもっとみんなが言わないと。死んだらみんながかばってくれるっていう風潮がすごく嫌なんですよ」などと発言し、賛否両論が起きていました。

 ネットではこんな意見が見られました。

「【死んだら負け】そんな言葉が追い詰められた精神を更に追い詰めるかもしれない」

「ずっと死のうと思ってたからなんかグッときた。女子高生です」

 10月17日午後6時現在で約18万の「いいね」と約3万のリツイートがされています。

 私は不登校経験者であり、いじめ自殺についても取材を続けています。その経験から言うと「一理はあるが賛同はできません」というのが、ツイートに対する見解です。

「一理はある」と思えるのは、松本さんのツイートや発言が「死ねば苦しかった経験に周囲が耳を傾けてくれる」という誤解に警鐘を鳴らしている点です。

 私自身も中学2年生で不登校をする直前は「自分が死んだら学校は反省をしてくれるかもしれない」と思っていました。理不尽な教員や校則に苦しめられてきたからです。いじめに苦しんできた人からは「俺が死んだら、俺をいじめてきたやつらが裁かれる」と思い、自殺を考えていたという話も聞きました。

 しかし、それは誤解です。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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自殺後も続いたいじめ「せいせいした」