投手交代を告げられたソフトバンク・加治屋 (c)朝日新聞社
投手交代を告げられたソフトバンク・加治屋 (c)朝日新聞社

 その“続投”に、監督としての思いと信念がひしひしと伝わってきたのは確かだ。

「打たれることもありますよ。彼への信頼は変わりません。きょうのことは、早く忘れてまた明日。シーズン中もそうだったんですけど、信頼して使ってきましたんで、その思いは変わらずです」

 10月14日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦。日本ハムに勝てばファイナルシリーズ進出が決まる一戦で、ソフトバンクは無念の黒星を喫した。監督の工藤公康は試合後、敗戦投手となった「8回の男」を一切責めようとしなかった。しかし「敗因」は明確だ。同点の8回2死無走者から二塁打を3本連続で打たれた加治屋蓮の喫した2失点だ。「自分の甘さが出ました」とプロ5年目の今季、セットアッパーという重要なポジションをつかんだ右腕は、期待に応えられなかったふがいない投球にひたすら自分を責めていた。

 7回、ソフトバンクは8番・高田知季の左前適時打で2-2の同点に追いついた。4回、ショートゴロを処理した高田は一塁へ悪送球。そこで許した走者が勝ち越しの2点目につながったとあって「何とかしたかった」。執念の一打に「エラーしても沈むことなく、前を向いて、彼の役割以上というか、いい働きをしてくれた」と工藤。こういう闘志を、指揮官は評価するのだ。やっと追いついた終盤。こうなれば、8回に最も信頼できる「セットアッパー」を送り出すのは当然の采配だ。

 13日の初戦。加治屋は最速151キロをマークして2奪三振。5点差の8回をきっちりと三者凡退に抑え、快勝に貢献した。この日は一転、同点の8回にマウンドへ。ここを封じることが逆転勝利への、そしてステージ突破へのカギとなる。日本ハムの8番・横尾俊建を149キロの直球で詰まらせての三ゴロ、続く中島卓也も149キロと力で押し込んでのレフトフライ。あっさりと2アウトを取った。

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事態は急展開…