さらに、ソフトバンクが最も警戒する日本ハムの1番打者・西川遥輝は今季、2年連続3度目のパ盗塁王。「西川に走られたとき、ウチは負けとるんよ」とは達川光男ヘッドコーチ。その認識通り、今季の25試合の対戦のうち、西川に計6盗塁を許しているが、その5試合でソフトバンクは1勝4敗。左腕・ミランダの起用には、西川が左打者でもあり、出塁されても一塁に正対する左投手だと盗塁のスタートが切りづらいという“メリット”もある。「日本ハムは足で得点を取ってきたり、スキのない野球をやる印象がある。そこをどうやって止めるかが課題」と工藤。ミランダの開幕投手は奇策でも何でもなく、今季の反省を生かし、「ストップ・ザ・西川」という最重要テーマから導き出された“正攻法”なのだ。

「シーズンが終わったときより、選手の状態は上がっている。絶対に勝つんだという強い気持ちを持って、この4日間、練習もしてくれていたし、自信を持ってファーストステージを戦いたい」と工藤は言う。まず、ここで勢いをつけ、今シーズン再三煮え湯を飲まされ、リーグ連覇を阻まれた西武にリベンジを果たしたい。11日のシート打撃でも本塁打を放ち、「最高っ」と決めぜりふの“予行演習”も終えた主砲・柳田も「しっかり準備はしました。あとは、野球の神様に祈ります」と笑った。

「ウチに、やり返すチャンスはまだあるわけなんだからね」

 そう語る王の闘志は、78歳になった今でも、監督時代の“熱さ”と変わらないものがあった。2年連続日本一への挑戦。チーム一丸、燃えるソフトバンクの秋の陣は、13日午後1時にいよいよ、その火ぶたを切る。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。