ただ、CS導入時から、リーグ優勝チームがファイナルステージ初戦まで10日近く空いてしまうスケジュールは「優勝の勢いが止まる」と言われていた。昨季のソフトバンクも、ファイナルステージでは2連敗スタートを喫している。優勝した西武は今月6日に博多でリーグ最終戦を終えると、そのまま宮崎入り。主力陣もフェニックスリーグに参戦して、ゲーム勘を失わないように努めているが、「西武はちょっと時間が空くからね。打者が大変だと思うよ」と王。それは自らの“悔しい体験”からの指摘でもある。

 それだけ、短期決戦では「勢い」が重視されている。2戦先勝のファーストステージでは、データでもそれが“裏付け”されているのだ。現行のプレーオフ制度が発足した2004年以降、昨季までの14回でファーストステージ初戦を取ったチームが、ファイナルステージへ進出したのはうち12度。初戦黒星の後、2連勝したケースは2006年のソフトバンクと、2017年の楽天の2度しかない。

 敵将の日本ハム・栗山英樹と並んで開幕の公式会見に臨んだ工藤は「初戦を勝ったチームが圧倒的に有利なのは変わらない。そこをどうやって勝つか。1つ勢いに乗せてしまうと止めるのは難しいし、止めるのはよっぽどの力がないといけない」と言い、さらに「それで終わりではないけど、負けたら追い込まれるのと同じ」。つまり、ファーストステージ突破のカギは先手必勝。そのために「チームを勝利に導いてくれる高い確率だと思って決めた」と工藤が指名した先発投手は、エース・千賀滉大という大方の予想とは違い、左腕のアリエル・ミランダだった。

 和田毅、東浜巨ら先発陣に故障者が続出した投手陣の中で、7月6日に緊急獲得したキューバ人の29歳は、3カ月間で6勝をマーク。終盤の先発ローテの一角を守り、8試合での防御率も1.89。「シーズン途中からだったけど、ホントにいい仕事をしてくれたよ」と王も絶賛する。そのミランダは、日本ハム相手に9月23日にヤフオクドームで先発。対戦はその一度だけだが、7回二死まで内野安打1本と完全に封じ込めており「起用の意図は安定感。持ち球や彼の特徴を考えて」と工藤は説明した。

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日本ハムで最警戒すべきは