ソフトバンク・柳田 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・柳田 (c)朝日新聞社

 10月12日、ソフトバンクの全体練習が始まって1時間が経過した午前11時半、球団会長の王貞治が打撃ケージの後方へと歩を進めた。白のカッターシャツと黒のパンツ姿、その左手には黒のノックバットが握られている。主砲・柳田悠岐が、フルスイングで打球をぽんぽんと右翼スタンドへ放り込む光景に「いいねえ」と嬉しそうな声を上げ、ケージを出てきた柳田に向かって何度もうなずきながら、拍手を送った。それは、監督時代に選手を励ましていたときと変わらない“王スタイル”でもある。

「いよいよだね」

 王も勝負師の血が騒ぐのだろう。クライマックス・シリーズ(CS)のファーストステージがいよいよ13日に開幕する。リーグ連覇を逃した2位・ソフトバンクは3位の日本ハムを迎え、まず2戦先勝の短期決戦に挑む。球団会長の王は、多忙なスケジュールの中、シリーズ前練習に必ず姿を見せて監督の工藤公康と語り合い、選手たちに声を掛けた。守護神のデニス・サファテ、昨季最優秀中継ぎのタイトルに輝いた岩崎翔を欠く今季、主将の内川聖一もコンディション不良で夏以降は2軍落ち、遊撃・今宮健太も右肘など相次ぐケガでシーズン中も離脱が続き、CSでも使えない公算が大きい。それでも、「ウチはそれで82勝したんだからね。大したもんですよ」と王は言う。その言葉を裏読みすれば、「ウチはそんなヤワじゃないよ。2位で終わった屈辱はCSで必ず晴らしてみせるよ」という、王の自信を物語っているかのようだ。

「シーズンの最後は12連戦。選手はちょっとへばっていたから、ちょうどよかったんじゃない? リリーフ陣だって、休まさないといけなかったからね」

 12連戦の最後となった今季ラストゲームは今月8日。そこから4日を挟んでCS初戦に挑むスケジュールは「ウチには、ちょうどいいんじゃないかと思うんだよね」と王は分析する。監督時代の2004年、2位・西武に4.5ゲーム差、2005年も2位・ロッテに4.5ゲーム差をつけ、レギュラーシーズンでの勝率は1位もプレーオフでいずれも敗れ、当時のルールでは2位扱い。2年連続でのファイナル敗退に、王ホークスは「短期決戦に弱い」と言われ続けてきた。

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短期決戦に必要なのは……