ただですね。舞台とかで「全然緊張してない日はヤバイ」と言われたりもします。ある程度気が張ってないと、何か失敗をする可能性が高くなるということだと思います。

 そもそも、緊張する場面があるということは、それだけで恵まれてるという気もします。うまくやらなければいけない「勝負」の機会があるというのは、幸せなことなのではないかとも思うのです。

 いま俺は、成功と失敗の狭間で勝負を挑んでるんだ、立ち向かってるんだ、さあ見よ、緊張している俺を存分に見よ、そんな風に思えたら、緊張とも多少はうまく付き合えるかなと思ったりします。緊張は幸せ、緊張はカッコいい。まあ、言うは易しかもしれませんが。

 そんな感じで、日頃から「俺、人前に立つような人間じゃないのになあ」と思ってる僕は、相変わらず、人前でウジウジ緊張しながら、役者稼業に邁進したいと思っています。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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