そのような国会議員が首相や大臣など、国民全体の支持が必要になるポジションに就いてはじめて、自分のこれまでの価値観・信念・政治信条・感覚では支持を得られないことを痛感する。しかし、そのときには時すでに遅しというパターンが多い。

 僕は政治家になる前にテレビメディアで仕事をしてきて、目の前の数台のテレビカメラの向こうに何百万人の視聴者がいることを常に意識してきたので、政治家になってからも目の前の支援者の声が有権者全体の声ではないということを十分に分かった上で政治をやっていたつもりだ。その僕でさえも、熱烈に応援してくれる1000人や2000人に政治パーティーなどで囲まれて「頑張れ!」「もっとやれ!」「応援している!」などと言われると、これが民意かという気に一瞬なってしまう。

 日本の有権者1億人のうちのたかだか1000人、2000人に過ぎないのに、目の前に見える1000人、2000人という数の威力は政治家にとってとてつもない。

 国民全体からすればほんの一部に過ぎない自分の熱烈な支援者の声を国民全体の声だと錯覚するのは、政治家の陥りやすいワナであり、このワナに陥らないように、そして陥ってもそこから脱するためには、政治マーケティングをフル活用する必要がある。野党が支持層を広げ、強い野党になるためのキーだ。