元ヤクルトの八重樫幸雄さん
元ヤクルトの八重樫幸雄さん

 長いペナントレースが終わり、いよいよポストシーズンに突入した今年のプロ野球。セ・リーグでは昨年ダントツの最下位だったヤクルトが躍進を見せて2位となり、3年ぶりのクライマックスシリーズ進出を果たした。昨年はDeNAが3位から勝ち上がって日本シリーズに進出し、日本一となったソフトバンクを相手にも善戦したように、今年もレギュラーシーズンの順位がそのまま反映されないことも十分に考えられる。そんなクライマックスシリーズを前に、ヤクルトで選手、指導者として5度の日本一を経験した八重樫幸雄氏に短期決戦ならではの戦い方のポイントや難しさ、見方などを聞いてみた。

-八重樫さんが最初に日本シリーズでプレーをされたのはヤクルトが初優勝、日本一に輝いた1978年になります。八重樫さんご自身はまだ若手だったと思いますが、当時の日本シリーズに対する印象、思い出などはどんなものがありますか?

「この年は左膝を負傷して、あんまり試合にも出ていなかったので、プレーについてはあまり印象に残っていることはないですね。ただ、それまではずっと優勝には縁がなくて、秋季キャンプ中のデーゲームだったこともあってテレビで見たこともほとんどなかったと思います。だから、日本シリーズに初めて出るとなって、(何度も出ていた)巨人の選手はいつもこんな感じなんだなと思ったことは覚えていますね。当時は当然交流戦もないし、パ・リーグとはオープン戦で対戦するだけでデータも本当に少なかったと思います。だから、対策も実際に試合が始まってからすることが大半でしたね」

-その後しばらく優勝からは遠ざかっていましたが、現役時代の最後の2年は野村克也監督のもとで日本シリーズに出場して、最終年は日本一にも輝きました。やはり、この当時になると、最初の優勝の時とは戦い方は大きく変わっていたのでしょうか?

「スコアラーが取ってくるデータは増えていましたけど、それでも始まってみないと分からない部分は大きいですね。野村監督は細かい印象があるかもしれませんが、選手に全て細かく伝えるわけではありません。どうやって選手に伝えるかはコーチの判断でしたので、ある程度大まかな傾向は伝えますが、やはり、実際に対戦してからの情報、感覚が重要だと思っていました」

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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