東京都築地市場(中央区)移転に反対する「築地市場営業権組合」は10日、都庁で記者会見を開き、豊洲新市場(江東区)が開場する11日以降も築地市場の場内で仲卸業者6店舗が営業を続けることを発表した。
同組合の共同代表の一人で、自らも営業を続ける意思を明らかにした宮原洋志さんは、会見で「83年間守ってきた暖簾(のれん)に託された心に、応えないといけない」と話した。豊洲市場でも営業をするとのことだが、決意に至ったのは「お客さんから『築地で営業を続けてほしい』との声が多かった」からだと話した。
また、11日午前8時からは支援者らが「場内お買い物ツアー」を開催。場内を見学しながら築地の歴史を学び、買い物もするという。一般客の参加も呼びかけている。
都は9月10日、豊洲市場の開場について農林水産相から認可を受けたと発表している。一方、同組合は認可された内容について「必要に応じ施設の改善を図ることができる中央卸売市場」から築地市場が外れただけで、廃止はされていないと主張している。
会見に参加した熊本一規・明治学院大学名誉教授は、その根拠についてこう説明する。
「卸売市場法では、中央卸売市場の廃止が認められるのは『一般消費者及び関係事業者の利益が害されるおそれがない』ときだと規定されている。移転で卸売業者に不利益が出るのは明らかで、都は築地市場を廃止することはできません」
同組合によると、築地市場で営業権を持つ約500人のうち約150人が同組合に参加し、営業権の放棄を拒否しているという。営業権とはその名の通り、築地市場の各事業者が営業できる権利のこと。憲法29条で守られている財産権の一部で、都が勝手に権利を失効させることはできないと同組合は主張している。
ただ、同組合は金銭面の補償を求めるためだけに営業権を主張しているわけではない。前出の宮原さんは言う。
「すでに豊洲市場ではフォークリフトが築地市場の時のように自由に使えない、駐車場が足りないなどの不満が仲卸業者から出ています。さらに心配なのが、豊洲市場が働く人の『命』に関わる問題を抱えていることです。地盤がゆるく、地震で液状化が起きる可能性がある。そうなれば地下の汚染土壌が噴き出し、有害ガスが発生するかもしれない。施設内も完全密閉型で、湿度が高くカビが発生しやすい。食中毒が起これば人の命に関わります。そういった不安は、現在でもまったく払拭されていません」