「あああーーーーわーーーーーああああっ!」

 という雄叫びが外から聞こえた! なんだ? 事件か?

「ウラーーーあああい!」

 まただ!

「ブッ!」

 あ、オナラだ。夫だ。

 二階でセリフを覚えているんだった。

(続けます)主人公に、対処をアドバイスするシーンなんかもあったな。

 幼児の親が皆怯える熱痙攣。

 急速に体温が上がる過程で、脳が対処できずに突如痙攣を起こす。

 大抵はすぐにおさまるので、落ち着いて時間を計り、おさまってから病院へ連れて行けばいいらしいのだが、現役の看護師でさえ、我が子の熱痙攣に頭が真っ白になってしまうほど、その様子は恐ろしいようなのだ。

「事前にしっかり学んでおいたほうがいいよ」とママ友にアドバイスされた。

 で、保育園からの着信であるが、やはり、

「熱が上がったので迎えにきてください」

 というもの。

 夫は舞台の本番で劇場から出られない。

 慌てて母に電話。母も仕事をしているので、いつでもお願いできるわけではない。

 電車で移動中だった母だが、予定をキャンセルし、すぐに保育園に向かってくれることに。

 その夜には、やはり熱が上がった。

 痰が絡む咳と鼻水も出て、チビは寝苦しいようで何度も泣いて起きてしまう。

 夫と交代で世話をして、気づけば朝。

 夫に託してゾンビみたいに出勤し、旦那は病院に連れて行ったのち義母にバトンタッチして出勤、熱で保育園に行けないチビは日中をばあちゃんと過ごす。(昼間はとっっっっても元気)

 そんな風にバタバタと嵐のような寝不足の10日間がすぎて、静寂が戻ってきた。

 チビは4日ほどですっかり回復し、今日も元気に登園していった。

 最近のブームは、イケアのおっきな木のサラダボウルにすっぽりおさまることと、大人と一緒にお辞儀することだ。

 こないだ病院に貼られていたポスターのアンパンマンの絵に反応し、笑いかけながら手を伸ばしていた。

 まだアニメのアンパンマン見たことないのに!

 すごいな、アンパンマン。

 おっと、もう11時半。時間が経つのが早いなあ。

 そろそろ夫が出かける時間だ。

 ちなみに最近の夫のブームは、「ブッ!」とオナラをして、それをチビのせいにすることだ。

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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