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「妻が働きたいと言いだしました」怒る夫に鴻上尚史が伝えた言葉とは?

連載「鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい『世間』を楽に生きる処方箋」

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 ラグビーの起こりも、半分俗説ですがそうですね。イギリスの「ラグビー校」のエリス少年は、フットボールの試合中にいきなりボールを抱えて走り出しました。ルール違反ですね。でも、これは面白いと「ラグビー」という競技が生まれたのです。

 ひょっとして、奥さんの「ルール違反」から、楽しいことが起こるかもしれません。奥さんが生きがいを感じていきいきして、子供達もそういう母親を見て、喜ぶかもしれません。

 きーやん。「そうは言っても、俺は家事なんかする気もないし、する時間もない」と思うでしょう。でも、生きがいのない母親に育てられる子供と、夫を深い部分で恨んでしまった妻とこれから何十年も生活するのは、それ以上に大変になる可能性があります。

 昔だったら「女は黙って家庭に入ってろ!」ですみましたが、今は、「夫が簡単な家事なら手伝ってくれている家庭」「妻が生きがいを見つけていきいきと働いている家庭」なんて、ネットでググれば、簡単に見つかります。奥さんに、ずっと我慢を強いるのは不可能なのです。

 僕の両親は小学校の教師でした。父も母も、あの当時はブラックという意識がないまま、ずっと働いていました。

 母は料理を作る時間もなかなかなかったので、小学校の時代から、インスタントラーメンは僕の親友でしたし、中学校の時はお弁当ではなくて購買部の焼きそばパンが母親代わりでした。でも、僕は母親を一度も恨んだことはありませんでした。母親が毎日、学級通信を発行し、子供達を親身に世話しているのを知っていたからです。

 その充実した横顔は、子供にとって自慢であっても淋しさとか愚痴の対象ではありませんでした。

 さて、きーやん。僕が言えるのはここまでです。奥さんは聡明な人だと思います。2年後と時間を示し、それまでの準備の期間をちゃんときーやんに伝えているのですから。

 怒らないで、いろいろと奥さんと話し合って下さい。きーやんの気持ちを全部伝え、奥さんの気持ちも全部聞きましょう。それができている夫婦は少ないと思いますが、きーやんが離婚を考えてないなら、そうした方がいいと思います。


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鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。また近著に『不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)、谷川俊太郎氏との共著に『そんなとき隣に詩がいます ~鴻上尚史が選ぶ谷川俊太郎の詩~』(大和書房)がある。

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