ちなみにフォワ賞はファーブル厩舎が3着までを独占。2着のタリスマニックは昨年に制した米G1ブリーダーズカップターフの連覇を目指して凱旋門賞を回避するとみられているが、3着のクロスオブスターズは昨年の凱旋門賞2着馬でもあるだけにリベンジを狙うと思われる。ヴァルトガイストに3連敗中と格下感は否めないが、無視はできない力を秘めている。

 昨年のエネイブルもそうだったが、斤量的に有利とされる3歳牝馬(古馬の牡馬より4.5キロ軽い55キロで出走)は、近年の凱旋門賞で忘れてはならない存在。今年もっとも注目すべき3歳牝馬は、シーオブクラスで間違いない。愛オークスとヨークシャーオークスの両G1を制した能力はかなりのものだ。ただし凱旋門賞への出走にはレース4日前までに12万ユーロ(約1600万円)の追加登録料が必要で、さらに同馬を管理するW.ハガス調教師はシーオブクラスに向かない緩めの馬場になりそうな場合は回避を示唆している。だが出走に踏み切れば、それは勝算ありと踏んでのことだけに、相応のマークはすべきだろう。

 一方、3歳牡馬はあまり評価が上がっていない。今年の欧州クラシック組は、英ダービー馬マサーが故障離脱し、英2000ギニーを制したディープインパクト産駒のサクソンウォリアーも故障で引退してしまった。愛ダービー馬ラトローブは長距離戦線へ向かい、英ダービー3着後に中距離G1を連勝中のロアリングライオンはクラシックディスタンスの凱旋門賞ではなく英チャンピオンステークスを目指している。

 そんな中でディープインパクト産駒の仏ダービー馬スタディオブマンは、凱旋門賞に出る可能性をまだ残している。ダービー後は仏G2ギヨームドルナーノ賞3着、G1愛チャンピオンステークス5着と2000m戦で連敗しているが、P.バリー調教師は2400mへの距離延長で変わり身を見せる可能性に期待を寄せているという。ただし仏ダービー組はレーティング的に高い評価を受けておらず、スタディオブマンも伏兵扱いの域は出ていない。

 いずれにせよ、クリンチャーにとっては出走全馬が格上と言っても過言ではない凱旋門賞。苦戦は濃厚だが、それでも競馬に絶対はないのも事実。実際、オルフェーヴルが最初の挑戦で2着に敗れた際の勝ち馬は、牝馬限定のG2しか勝った実績のない伏兵ソレミアだった。日本馬初の凱旋門賞馬にクリンチャーがなる可能性もゼロではない。無事に出走することを祈りつつ本番を待とう。(文・杉山貴宏)