今年、アメリカに時価総額1兆ドルを超える企業が相次いで誕生した。

 8月2日にアップルが1兆ドルを突破したかと思うと、そのわずか33日後の9月5日にアマゾンも1兆ドルの大台に乗せ、近いうちにグーグルの親会社アルファベットなども続くのではと言われている。

 ニューヨーク証券取引所の200年を超える歴史の中で、初めて1兆ドルを突破したのは、アップルだった。一時は「身売りか倒産か」と言われるところまで業績が落ち込み、2011年にはカリスマ経営者スティーブ・ジョブズを失いながら、アップルはいかにして成長を続け、歴史的な偉業を成し遂げたのか。『スティーブ・ジョブズ 世界を興奮させる組織のつくり方』の著者、桑原晃弥氏に話を聞いた。

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 企業を評価する尺度は時価総額がすべてではありませんが、日本一のトヨタ自動車の時価総額が約22兆円ということを考えると、アップルやアマゾンの巨大さがよく分かります。アップルの創業は1976年のことです。スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアック、ロン・ウェイン(その後離脱)の3人で創業、ジョブズの実家のガレージでアップルIを組み立てるというほんのささやかなスタートでした。

 以来、40年余りで1兆ドル企業へと成長したわけですが、その軌跡は、ほぼ一直線に成長し続けたアマゾンとは違って山あり谷ありのものでした。アップルはアップルIIの大ヒットにより創業からわずか4年で株式を公開、その後もマッキントッシュによって一大ブームを巻き起こしたものの、85年にジョブズはアップルから追放されています。

 以来、アップルは約10年余りに渡ってジョブズ不在となります。その間、アップルはジョン・スカリーの下で、栄光の時代もありましたが、その後は転落の一途を辿り、話題になるのは「商品」ではなく「身売りか倒産か」という悲惨な話ばかりでした。

 1997年、ジョブズが暫定CEOに就任した当時の時価総額はわずか23億ドル程度に過ぎませんでした。株式を公開した際の時価総額が約18億ドルですから、時価総額はわずか5億ドルしか上がらなかったことになります。

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そして10年後の2007年6月…