そんななか、この日2度目の打席に立った石井は、「構えたときに自分でもカッコいいと思った。打てる気がした」と自信満々で戸叶の内角カーブをフルスイング。右翼席に突き刺さるチーム初安打、初得点の先制ソロとなった。95年7月29日の巨人戦(神宮)以来、約2年ぶりのプロ通算2号である。

 エースの“ノーノー破り弾”で目を覚ましたヤクルト打線は、ここから怒涛の4連打で戸叶をKO。一挙4点をもぎ取り、試合を決めた。石井も8回を被安打2の無失点と投打にわたってヒーローに。

 実は、野村克也監督に「ウチは8人で攻撃している」と言われたことへの反発が生んだ一発だった。その野村監督も「『今日はオレが打てないと勝てない』と言っていたらしいよ。どでかいことをやる星の下に生まれている」と脱帽するばかり。

 お立ち台で「またホームランを打ちますので、見に来てください」とアピールした“強打者”は、ドジャース時代の04年にもメジャー1号を記録している。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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