元巨人のガルベス (c)朝日新聞社
元巨人のガルベス (c)朝日新聞社

 2018年シーズンも終盤戦に差し掛かり、クライマックスシリーズを巡る争いが気になる今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「打者顔負けの投手編」だ。

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 現役最後のマウンドに上がった直後、思いがけず回ってきた現役最後の打席で豪快なホームランをかっ飛ばしたのが、巨人・堀内恒夫だ。

 第1回のドラフトで巨人に1位指名入団して以来、18年間で通算203勝を挙げた堀内は、1983年のシーズン限りでの現役引退を発表。球団はその功労に報いるため、シーズン最終戦となった10月22日の大洋戦(後楽園)で“引退試合”の花道登板を用意した。

 堀内がマウンドに上がったのは、6対3とリードした8回。先頭の屋舗要に右前安打を許したが、高木豊を右直、福嶋久晃を二ゴロ併殺に打ち取り、見事3人で抑える。

 その裏、巨人の攻撃は5番・駒田徳広から。篠塚利夫の後の3番に入った堀内まで打順が回ってくるのは、さすがに無理と思われた。ところが、巨人の各打者は「堀内さんまで回せ!」を合言葉に猛攻の狼煙を上げる。

 まず駒田が右越えソロ。石渡茂が四球を選び、1死後、吉田孝司が中前安打でチャンスを広げると、山本功児が右越えにダメ押し3ラン。さらに吉村禎章が中越え三塁打で続くと、鈴木康友の投前犠打が敵失を呼び、11対3の1死一塁でこの回8人目の堀内に現役最後の打席が回ってきた。

 スタンドの「かっ飛ばせ!堀内!」の大合唱を背にカウント1-2から金沢次男の直球をフルスイングすると、快音を発した打球は左翼席へ。1試合3本塁打を記録したこともある“強打者”堀内が現役最後の打席で記録した通算21号だった。

「本当はよお、空振り(三振)するつもりだったんだよ。金沢には悪いことしたな」(堀内)。

 直後、9回のマウンドに上がり、2死から連打を許したものの、最後の打者・若菜嘉晴を右飛に打ち取り、3年ぶりのセーブ。投打にわたって有終の美を飾った。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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松井秀喜も脱帽したガルベスの打撃