子供の頃から憧れだった、という木村の存在が黒後の中でより際立ったのは、8年前に日本で開催された世界選手権で銅メダルを獲得する姿。木村が最後の1本を託され、決め切ったアメリカとの3位決定戦は今でもよく覚えている。ネーションズリーグ、アジア大会と期待値が上がるごとにプレッシャーも増すが、「どんな状況でも自分がやることは同じだし、あまり気負いはない」と言う若きエースが、世界の猛者を相手にどこまで戦うことができるか。いよいよ始まる世界選手権に向け、黒後が言った。

「テレビで見ていた大会に自分が出られるなんて思いませんでしたが、世界選手権はたくさんの方の思いがつまった大会なので、ここでしっかり結果を残したい。それが自分たちにできることだと思うので、結果にこだわって、持ち味を生かせるように頑張ります」

 1次ラウンドで対戦するオランダ、2次ラウンドでの対戦が見込まれるブラジル、セルビアなど世界各国も2年後の五輪を見据え、試すのではなく、世界選手権に万全の準備で勝負をかける。本気の“世界”に対して、どれだけひるまず、黒後は持ち前の勝負強さを発揮することができるか。そして、エースとして日本を勝利に導くことができるのか。

 29日、アルゼンチンとの開幕戦から真価を問われる戦いが幕を開ける。(文・田中夕子)