中山:うん。出す予定がない趣味の小説を書いています。SFなんですけど、中山七里のSFなんて誰も買わないのわかってるから。

新井:(笑)でも、書きたいんですねー。書く事が、そもそも面白いんですか?

中山:面白い。自分の考えを文章にして、小説にしたらどんな形になるのかっていうことが、楽しい。

新井:ふーん。

中山:で、ずっと趣味で書いていたんだけど、そのうちに「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して、仕事で小説を書くようになったから、いまは趣味の小説を書いて息抜きしてる。

新井:それが気分転換なんですね。でも、『中山七転八倒』を読めばわかるんだけど、かなり人としておかしい(笑)。一番すごいと思ったのは、お手洗い。

中山:あー、はい。1日1回ですもん、僕は。デビューしたときに、お仕事いただいて、仕事増えるじゃないですか。そのときに、もうトイレ行く暇がもったいないような状態になって。

新井:まあ、たしかに。人生において、お手洗いっていう時間は結構ある。なんとか縮小したいと思うんだけど、やっぱどうしても行きたくなっちゃうんですよね。尿意を無視するんですか?

中山:無視です。トイレ行くの面倒だしね。それに、飯食べるのも、もったいないから、三日に一回。体質は、結構簡単に変えられました。

新井:(笑)でも具合が悪そうなところは見たことがないです。

中山:そうなんですよ。人間ドックの問診票で「睡眠何時間」って書くところに、該当するものがないので、「睡眠不定期」って書いたら、「不定期ってなんですか」って言われた。

新井:(笑)寝なくはない、けど、ほとんど寝ない。

中山:あんまり寝ませんって言ったら、お医者さんから「あのー、飯食わなくてもなかなか人間死なないけど、寝ないと死ぬよ」って言われて、そうか死ぬのかーって思った。

新井:(笑)うん。

中山:死んでもいいんだけどね。

新井:(笑)書きながらね。

中山:いま、一応、小説を書いてそれを発表できる立場をいただいたじゃないですか。だったら、30年生きて10作残すよりは、2年生きて20作残すほうがいいなって思っていて。江戸川乱歩賞にしても、このミス大賞にしても、どんな新人賞でも。落選した人が必ずいるわけですよ。だったら、選ばれた人は、その人たちの無念とか、そういうものを全て背負って仕事しなきゃいけないから、そりゃあ怠けたら嘘でしょって。僕はそういう風に思っているんです。

(2018年8月31日@三省堂神保町本店)